「パン屋を襲う」村上春樹著-感想【ネタバレ有り】想像力の不足が招く行動の危うさ

【まとめ】彼女が選んだのは「明るい」マクドナルドだった

しかし都心とはいえ深夜に営業しているパン屋などあるわけがない。
彼女がターゲットにしたのはマクドナルドだった。
周りが墓場のように静まり返っている中、“明るい看板”のマクドナルドだ。
誰もが知っているチェーン店。

最後はパン屋という目的も捨て去った。
以前夫が若い時に出来なかったことをしようと。
今確固たる目的があって何かをしなければいけないという衝動ではない。
何故かと言われても、当然やらなければいけなかったという悔い(心残り)がある、
残るのは困るからだ。

これは想像力不足からきている。
そしておそらく欲望が満足しても想像力は不足したままだ。

最初に男二人でやろうとしたけれどもやらなかったことが、本人とかかわった人に伝染して形を変えて呪いとなる、そして最後はターゲットさえも変えていく。

虚無感が存在するので、彼は自分を知ろうと行動する。
行動しない限り呪いを解くことは出来ないからだ。
しかし理想はねじ曲がり目的もかわってしまう。
見当違いなことばかりを繰り返す。

なぜなら人それぞれに事情をもっている。
世の中はつねに揺れ動いているものだからだ。

記憶として残ったのは「食欲は満たした」という結果のみだ。

「想像力が欠けてしまっている人間」は、
一度決めてしまうと想像力不足に陥って自分の欲望を果たそうと色々な理由を付ける。
善悪を顧みず実行し、自分の欲望が満たされればすべてを終わりにしてしまう。
まるで最初から何もなかったように。

最後に海底火山の姿が無くなってしまうというのがそれを象徴している。

先ほど言ったことと矛盾してしまうが、
海底火山は彼の想像力を現わしているものだけではなくて、
「眠らしているだけで意味のない感情」でもあると思った。

つまり都合によって現れたり消えたりする「本人の言い訳の道具」である。

本当の想像力は言い訳を必要としない。】

想像力は簡単に言葉にあらわせるものではない。

そして彼女(妻)は、彼の自分勝手な行動と理由づけ(火山)を明らかにする役割をしているようにみえる。

人間は誰でも欲望をもっている。
それを満たす理由は身近に隠れている。
それを実行しても「空虚」になるだけ。

なせならどんなに理由をつけても自分の都合でしかないからだ。

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*長くてごめんなさい、次ページでさらに深読みします。