*「職業としての小説家」村上春樹著 新潮文庫刊 を読んだ感想になります。
前回の記事で「テーマ」が出てこないと書きましたが、再度読み直したところ1箇所ありました。
自分の見落としでした、訂正します。今回はその1箇所でてくる「テーマ」に注目。
そこを切り口にしてマテリアルやヴィークルについて考えます。
前回の記事「さて何を書けばいいのかを読みマテリアルについて考えた」の続きです。
ネタバレが有りますのでご注意ください。
マテリアルが「テーマ」なのだろうか?
最初から重たいマテリアルを手にして出発した作家たちは、~ある時点で「重さ負け」をしてしまう傾向がなきにしもあらずです。
P137
この後「戦争体験を書くことから出発した作家たちは~」と続くのですが、
ここでわかるのは、重たいマテリアルの例として“戦争体験”をあげているという事です。
戦争体験といえば、立派なテーマです。
その重さから作家は次に何を書こうか追い込まれることが多いという。
この後に続く文章に「テーマ」が出てきます。
思い切って方向転換をし、新しいテーマをつかんで、作家として更に成長していく人もいます。
P138
つまり文章を通してみると、
「重いマテリアル(戦争体験)から、~思い切って方向転換をし、新しいテーマをつかんで~」と書いているので、マテリアルはテーマと同じようなものとしてとらえることが出来るのかなと思います。
(テーマという言葉の置き換えが漏れたのでしょうか、それともあえて残したのか?‥)
マテリアルにヴィークルが加わり物語が生まれる。
本の中で“ヴィークル”という言葉が何度も出てきます。
とても重要な役割をもっていますので言葉の持つ意味について調べてみた。
【ヴィークル(vehicle)とは】英和辞書をひいてみた。
車、乗り物、(以外には)
伝達(表現)の手段、(絵画の)絵具を溶かす溶液。
という意味がある。
「伝達の手段」「絵具を溶かす溶液」という意味に少々驚き。
英語の【car】と同義語かなと思っていましたが【vehicle】の方が意味が広い。
そして車という意味からヴィークルとエンジンとを安易に関連付けていたことに気付く。
あまりにも早計でした。
マテリアルはテーマのようなものだが、そのまま使えるものではない。
ヴィークルが重要な役目を持っている。
マテリアルは、
キャンパスに描くための顔料(絵具)のようなもので溶かして使う?
マテリアルの素材という意味から、絵画で言う絵具(キャンパスに描くための顔料)ではないのかと思っていたのだ。ヴィークルが「絵具を溶かす溶液」の意味を持っていることを知り、ますますそのイメージが強くなった。
ヴィークルは、そのフォーム・スタイルが大切になる。
経験によりその形が出来上がるという。
村上さんは小説を書くためには、たくさんの本を読むことが必要だと言っています。
ヴィークルは伝達の手段であろう。
エンジンとは「内的な衝動」だという。オリジナルは自然な欲求や衝動のもたらす形であり、
「それ自体のフォームやスタイルを、自然に自発的に身につけて出てくるものだということになるかもしれません。」
P112
その「スタイル」については、オリジナリティについての章で書かれています。
スタイルの質がどうのこうのという以前に、ある程度のかさの実例を残さなければ~、その表現者のオリジナリティが立体的に浮かび上がってこないからです。
P101
ヴィークルの形は、フォームとかスタイルにある程度のかさ(量)がなければ、立体的にならない、ということでしょう。(スタイルを手に入れるには経験が必要になる。)
堅固なフォームができれば、マテリアルを扱う事(溶かすこと)が出来る?。
【ここまでの推測をまとめると】
ヴィークルとは、エンジンを意識させるものではない。
「伝達するために言葉を目的地まで運んでいく」役目を果たすもの。
(エンジンは内的な衝動。)
ヴィークルはマテリアルを溶かして使いやすくするもの?。
その「フォーム」が大切で、堅固であった方がいい。
ヴィークルはオリジナリティを生むために必要不可欠な基礎。
基礎をつくるためには読書と経験が必要らしい。
堅固で重くなればなるほど、それを動かすエンジンも大きくないといけない‥。
*次ページで、「エンジンはどこにあるのか」について考えてみました。