*保坂和志著「書きあぐねている人のための小説入門」株式会社草紙社刊 を読んだ感想になります。
題の「小説をかきあぐねている人のための小説入門」だけみると小説の作法を書いていると思ったのだが違っていました。
この本の扉の裏には、“この本はどう読めばいいのかといえば、少なくとも論理的・分析的には読まないで欲しい”と書いてあります。
自分は難しい理論が苦手なので、この文章を読んで嬉しくなりました。
芥川賞作家である保坂さんの語る小説の核心はとても面白かった。
その内容のほんの一部をご紹介します。
マニュアル本ではない
保坂さんは、小説を書いてみたいという人に対しての指南書にとどまらず、小説とは何なのか・どういう意味を持っているのか・なぜ面白いのかを教えてくれている。
小説とはストーリーだけでは語ることができない。物語がどうすすんでいくのか作者でさえ想像できない、作者と読者と一緒に作られるなど。小説のもつ不思議な力にも触れています。
小説について、自分でも誤解している部分がありました。
村上春樹さんの小説についても、本の中で触れています。
保坂和志さんのいう小説と村上さんがいう小説には、『小説の運動』を大切にしている点で、似ていると思いました。(どこが似ているのかはうまく言えませんが‥(-_-;)
*どの本か忘れてしまいましたが、村上さんも自分が今書いている主人公がどのように変わっていくのか楽しみ、と語っていたような気がします。
小説とは何か?
特に下記の言葉についての章は、興味深く面白かった。
・「ふつうの言葉では伝わらないものを伝えるのが小説」
・「第1作がなければ、2作目はない」
第一作にすべてを注ぎ込め。全力で小説を書くことで、その人が成長する。
・「テーマはかえって小説の運動を妨げる」
事前にテーマを設定してしまったら、作品の持つ自在な運動を妨げる。
・「小説は“読んでいる時間の中”にしか存在しない」
など他にも沢山の金言があります。
どれも刺激的かつ魅力的な言葉です。
また後半「ストーリーとは何か?」「テクニックについて」と、小説の方法論も書いています。
これもありきたりの解説ではありません。
小説について様々な視点から書いています。
おそらく小説の見方も変わると思います。
経験から発せられた言葉は説得力がありました。
小説はなぜおもしろいのか、それは作者が自由自在に書いているから。
直感的に感じることが大切だと言います。
小説の運動を大切に、楽しんで書いて欲しい。
簡単ではないと思いますが、勝手に動き出すような物語を書いてみたいものです。
小説とは何か?をつきつめている。
小説を書くということ、味わうということがどういうことなのか?
それを知ることができると思います。
保坂和志さんの伝えたかったことは、是非本を読むことで確かめてください。
*2003年に発刊された本だが全然古さを感じることがなかった。
発売が早すぎたのではないかと思うくらい。私には“目から鱗の話”がたくさんありました。
いい意味で裏切られる本でした。
マニュアル本は回り道しない定型的方法や成功している作家の方法論などをのせている。
この本はそういうことに主眼を置いていないせいかもしれません。
*最後まで読んでいただきありがとうございました。
保坂和志さんのデビュー作「プレーンソング」を読んでみたいと思いました。