「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」映画-感想

千葉県北東部「銚子市外川」「飯岡」の地域が舞台のモデルとして使用されているので、本当は映画館で観たかった。(ド派手な宣伝の「ラッピングバス」が走っていたので公開前から知っていました)今回テレビですが観ることが出来ました。「小さい頃の夏の思い出を回想させるファンタジー」に時間を忘れて見入ってしまいました。
*一部ネタバレを含みます。観ていない方は、観てから読むことをお勧めします。

2017年8月公開「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のスタッフを見て驚きました。現在活躍中のクリエーター・俳優・作曲家が集まっていたんですね。
名前を挙げると、声優で「広瀬すず」「菅野将暉」ほか、製作側で「川村元気」「岩井俊二」「渡辺明夫」「大根仁」ほか、音楽は「米津玄師」「DAOKO」ほか。蒼蒼たるメンバーです。

舞台

地方にある海辺の街「茂下町(もしもまち)」、突端には灯台があり、海沿いの道路に沿って風力発電が立ち並ぶ。高台にある円形の中学校、横にはプールがある。
中学1年生の夏休み。花火大会が大きなイベント。
花火大会が近づき花火が丸いか平べったいかで盛り上がっている男子生徒。典道と裕介は、クラスの美人女子「なずな」が気になっている。

おもな登場人物

及川なずな
茂下町に住む「茂下中学1年生女子」、水泳部所属少しクールで大人びているように見えるが実は年相応な女の子。色々な服を着こなす。かわいらしさと美しさの両方がある。まなざしが強いことあり。母は奔放。最近母に対して思う事があり、家庭内でいろいろある。

島田典道(しまだのりみち)
茂下 中学1年生、 茂下町にある釣具店の息子、小柄でおしゃれには興味ない、性格は慎重にものごとを考える方。普段は友人とバカな話をしている。かご付きママチャリにのる。クロールが得意、ゲーム好き。なずなが気になる。

安曇裕介(あずみゆうすけ)
茂下 中学1年生、典道の幼馴染、地元の医者の息子今どきの子供らしいノリの良さがある、あまり考えないで行動する。マウンテンバイクにのる。
ゲーム好き。なずなが、かなり気になっている。

あらすじ

海岸近くの茂下町(もしもまち)で中学1年生達が生活している。主人公の典道と クラスメイトである 裕介は夏休みに、クラスで人気の女子「なずな」が気になっていた。どちらが先に告白するのか競っている?地元の恒例の花火大会も近づいておりチャンスはそこにある?
一方クラスの同級生男子の間では「花火は丸いのか、平べったいのか」が話題?になっていた。しかしなぜか負けた方が好きな子に告白するという話になっていて、典道と裕介も『まったくしょーがないなあ』と思いながらも、花火の疑問については気になっている?
ひそかに二人とも夏休み中に水泳部のマドンナ、なづなに告白したい?と思っているからだ。
しかしなづなは家族の問題に悩んでいた。
花火大会の当日、彼女は典道と裕介の二人に水泳競争をお願いする「勝った方と花火大会に行く」と。(ここは映画の大切なシーンなので観てのお楽しみに)
その後彼女は典道に、最後の夏に『無茶なお願い』をしてくるのだ。
典道はどうそれに答えるのか。
そして裕介は?
花火の形の疑問は解決するのだろうか?

見どころ

13歳の典道となづなの「淡くあいまいな恋」の物語でその行方を描いています。切ない物語ですが湿っっぽい話ではありません。中学1年生の子供の目線で、その一ページを丁寧に繰り返しながら描いています。時代を越えて連綿として続いている夏休みの風景がここにあります。
自分も二人を観ることで中学生時代を思いだしました。
終わって欲しくないすてきな物語でした。夏休みに中学生男女二人の思い(恋?)が交錯します。同じ年頃の二人だけど、男と女の成長度の違いからか、「意識の差」や「しぐさの違い」が姿や行動に出ていました。その微妙なすれ違いも切ないところです。時空間を越えるようなファンタジーです。

*映画の時代は少し前なのでしょうか。携帯もスマホも出てきません、それが物語の世界観とはあっていました。(岩井俊二さん原案となるTVドラマが最初に作られたのは1993年とのこと)

田舎に住む中学生の夏休みの花火大会のお話。海辺の街、夏の海、花火、灯台、風力発電、駅、ディーゼル車など舞台をCGなども使い、奇麗に描いています。よく風景を観察し表現していると思いました。
プロのアニメーターが描く絵で見ると、いつもの風景も違って見えますね、モデルとはいえ自分の故郷を誇りに思いました。

映画のテーマ1-「if(もしも)の世界の映像化」

物語の転換点「もしも……だったら」

テーマの一つ目に「もしも」が提示されています。典道となずなの二人は「時間がない」中、問題を抱えて必死になっていました。そして色々初めての経験をします。典道となずなは、なすすべの見当たらない中「もしも~だったら、どうなっていたのか」の世界へ「もしも球」によって導かられていきます。

【もしも球は、映画の核】
「もしも球」の力によって、二人の時間をさかのぼり奇跡の経験をしていくのです。「もしも球」は映画の冒頭になずなが海でひろった球で、不思議な存在感を持ち、少年少女たちを「もしもの世界」に導きます。
*「もしも球」は映画の核となるので、ここでの説明は控えます。映画を観てその世界を楽しんでください。

実際の人生においては「もしも‥‥だったら」は禁句かもしれません。しかし映画の世界のファンタジーとして描かれています。

もしも、あのとき競争に勝っていれば~
もしも、あのとき女の子を助けていれば~
もしも、この夏が終わらなかったら~

もしもの願いが、2人の関係と未来を変えていきます。

問いかけである「もしも」とその意味

また「もしも」は映画の題名にある「花火を下から見るか、横から見るか」という問いかけに関係しています。
これは花火の形についての問いかけです。

もしも花火が平べったかったら‥‥。
もしも花火が丸くなかったら‥‥。

などの『問いかけ』として使われています。
そしてこの問いかけは「事実かそうでないかをハッキリしたいわけではなくて」、この問いかけで「夏休みにみんなで話題にしていたという思い出を残したい」のだと思いました。

映画のテーマ2-「繰り返す」

テーマの二つ目に、海の「波」にイメージされるような「繰り返す」があるのではないかと思います。(今は繰り返すしかないという波動のイメージです)
最後エンドロールに流れる映画の挿入歌「打上花火」に、こういう歌詞があります。

「何度でもくりかえすよ、君の名前をよぶよ」

直接に気持ちをうまく伝えられない中学生男子の恋は、「淡くあいまいな心」なので、こうするしかない気持ちが伝わりました。
また、この映画自体の持つリズム感が、時間を進んでは戻る「繰り返す波動」だと思いました。
*繰り返しから「命」や「永遠」も連想しました。

印象に残った言葉

印象に残った「言葉」を歌詞もふくめてあげてみました。

あいまいな心をとかしてつないでいく
「この夜が続いてほしかった」
「繰り返す波の鼓動」
「花火がパッと光ってさした」
「傷つくこと、喜ぶこと」
「最終電車で焦燥すること」
「未来が2人をみている」

二人の夏休みがどうなっていくのか?ぜひ見てください。
子供から大人へ変わる中学生のころに、誰しも経験しているでしょう。夏休みにある「淡い恋」と「別れ」の物語です。切ないけれども『終わって欲しくない夏休み・花火大会の夜』のお話です。

若い人は現在進行中の恋の話を、人生経験のある方は青春の日々を思いだします。
「甘酸っぱい夏休みの思い出」は、過去から現在もそして未来も、永遠に繰り返し続いていくのでしょう。この映画もずっと語り継がれていくはずです。

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*「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」公式ビジュアルガイド・KADOKAWA刊を参考にしました。