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ラグビーイメージイラスト

TBSドラマ-ノーサイドゲーム感想2-君嶋の魅力

さて感想の後半です。今回は君嶋というキャラクターに注目します。

【キャラクターの前には色々な障害を立ちふさがる。必死に解決していく、その過程でキャラクターは作られます】

君嶋の前にはいくつもの障害が立ちふさがります。
ラグビー部のGM職、ラグビーを体験し精神を知ること、選手の掌握、監督の選任、意見書作成、役員会でのプレゼン、予算案を通すこと、チーム強化、赤字の縮小策(観客動員数のUP~ファンを増やすこと~地域への貢献運動~ファンクラブ活動拡大)、会社幹部への報告、協会への対応など。
これらの障害を解決することでキャラクターの性格が明らかになり、周囲との信頼関係も厚くなっていきます。君嶋の切れのある仕事ぶり、ここが見どころで面白かった。

【池井戸潤さんはキャラクターに障害を越えさせるだけでなく、間にスポーツの楽しさや面白さも描いています】

「君嶋こと大泉さんのラグビーのグランド内外での練習参加」には、おもわず笑みがこぼれました。
主人公の君嶋のように、多くの視聴者はラグビーの経験もないしルールも詳しくはわからないでしょうから(自分もわかりません)、運動があまり得意でない君嶋の気持ちと一緒になることで、視聴者の共感を得るいいシーンだったと思います。
*さりげなく一流アスリートも出ていました。それも楽しみでした。

このラグビー練習シーンが「君嶋のチャレンジ精神と覚悟」を表してもいました。彼が会社内では弱みを見せることができない立場だからこそ、人間味を感じる場面になりました。
これ以外にも、家庭のシーンなど随所に挿入される主人公のコミカルな演技はいっぷくの清涼飲料のようです。

【この物語のテーマをキャラクターに語らせている所があります。ドラマの6話です】

キャラクターがその人格で一人歩きを始めると、作者の手を離れキャラクターが勝手に語りだします。それの出たのが、このシーンだったと思います。

トキワ自動車とカザマ商事の買収の話が進んでいる中、君嶋の元上司、経営戦略室室長の脇坂さんが君嶋に言います。

「経営戦略室に戻ってこないか、いまがチャンスだ」

君嶋にとってはとてもいい話です。いままでGMとして頑張ってきたのは本社へ戻るためだったのですから。おそらく転勤してすぐであれば、戻りますと二つ返事したのでしょうが、数日考えた上の君嶋の返事は違っていました。

「アストロズに残り部員と一緒に闘い、勝ったうえで本社に戻ります」

この一言は、君嶋がみずから組織人として退路を断ってしまったことを示しました。

そして君嶋はみずから望んでこの言葉を口にしたのです。
今自分が果たすべき責任は何かを考え、自分の出処進退(利益)よりも「チームのために、応援してくれている仲間のために命をかけて一緒に闘う」という使命感を優先したんです。もう自分のことは二の次になったんです。感動のシーンでした。
これがこの作品で一番伝えたかったことなのではないかと思います。
*2話にラグビーグランドで社長が君嶋に語った「ラグビーへリスペクト」や「仲間の大切さ」を語っていますが、その場面の言い換えにもみえます。

人間は誰かのためという大義ができると強くなれるんですね。
それを応援する奥さん(松たか子さん)が、夫を信じてその決断にOKを出すシーンも良かった。

君嶋というキャラクターが明らかに成長し、そのキャラクターを鮮明に際立たせた瞬間だったと思います。

*これはある小説家の先生が物語について語っていた言葉です。
「現実にあったことばかり書いていてもドラマにはならない。物語には小さな嘘が必要だ、それがリアリティを生む。」

君嶋の行動に対して「あんなこと普通のサラリーマンはするわけないよ、将来戻れるかどうかわからないんだから」と言うかもしれません。
普通に考えればそうです。でも大義(動機)がそれを可能にします。その大義にリアリティーを持たせるのにドラマは様々なディテールを積み重ねているのだと思うのです。

しかし主人公が、組織にさからい勝手なことばかりする(大きな嘘)ようでは視聴者は引いてしまいます。
『小さな嘘と真実をドラマのテーマにしのばせることが必要なんです』この場面で言うとストーリー上、君嶋の行動は小さな嘘にあたります。

*真実という点では、さきほどのシーン、経営戦略室で「君嶋のチームGMとして残る」という決意を聞いた脇坂さんが、君嶋に静かに返した言葉にうなりました。
「もう俺からこの話を出すことはないだろう」冷たいですが、これが現実だからです。

夢に挑戦することは必要だ。しかし現実は厳しい。それでも仲間のために命を懸けて闘わなければいけないときがあるんです。

君嶋こと大泉さんの主役らしい計算された演技、すばらしいです。君嶋はどういう行動をするのでしょうか。最終回が本当に楽しみです。