*「恋しくて」村上春樹訳に掲載されている短編「二人の少年と、一人の少女」トバイアス・ウルフ著を読んだ感想になります。
【注意】一部ネタバレあります。小説を読んでからこの記事を見ることをおすすめします。

この「恋しくて」の副題は、“甘くて苦い粒選りの10編、村上春樹が選んで訳した世界のラブストーリー+書き下ろし短編小説”とあり、
本の帯には“初心者の震えも、上級者の迷いも、恋する心に変わりはありません”と意味深な文字が続きます。
村上春樹さんが選んだ短編小説、どれも特徴ある小説ばかりでした。
今回は「二人の少年と、一人の少女」をご紹介します。
※個人な感想です。
「二人の少年と、一人の少女」 トバイアス・ウルフ著
【トバイアス・ウルフ(1945~)】
アラバマ州生まれ。ワシントン州で育つ。高校を中退後、軍隊に入隊。
オックスフォード大学で学んだのち、夜警やウェイターなど職業を転々とした。1975年からはスタンフォード大学で創作を学ぶ。
邦訳作品には自伝的作品『ボーイズ・ライフ』中央公論社刊や『バック・イン・ザ・ワールド』中央公論社刊がある。
*レイモンド・カーヴァーと親交があった。
*ボーイズライフはレオナルド・ディカプリオ主演で映画化されている。
おもな登場人物
・ギルバート
高校4年生?の男の子。卒業まじか。
父親の経営している書店で働いている。
根っからの皮肉屋。斜に構えている。
マサチューセッツ州のアマースト大学の入学許可はもらえていない。
ビールを飲み煙草を吸う、車の免許は持っていない。
・レイフ
ギルバートと同学年、無二の男の親友。
名門イェール大学に入学が決まっている。
オペラを聞き、スカッシュをたしなむ。
運転免許を持っている
古いビュイックのコンバーチブル車(オープンカー)をもつ。
*【イェール大学】
コネチカット州ニューヘイブン(アメリカ北東部) にある歴史ある格式高い大学。(ハーバード大学の最大のライバル)
・メアリ・アン
同学年の色白の黒髪の少女。瞳も黒く口紅が歯に滲む。
看護学校に入学予定、ついていけるか心配。
独学でギターを習っている。ダンスが上手。
単純な子。話は終始思いやりに満ちていた。
簡単なあらすじ(冒頭から中盤)
二人の少年ギルバートとレイフ、一人の少女メアリ・アンは、6月の末パーティで出会った。
メアリ・アンを先に目をつけたのはギルバート。その時彼女は一人だった。
その後別のパーティでは彼女はレイフと踊っていた。(レイフが先に仲良くなった?)
その夏どこに行くにも三人は一緒だった。
ギルバートはメアリ・アンと話をするときはレイフを経由して話した。二人になるとうまく話が出来なかった。
8月の初めに、レイフは父親とカナダに釣り旅行に出かける。
ギルバートに車のキーを渡し、メアリ・アンの面倒をよろしくと言い、レイフは出かける。
ギルバートは百貨店, フェリー、 大学の近くのバー。2軒のドラックストア、 物見台などを車でドライブする。
ギルバートはメアリ・アンと映画を観に出かけた。彼女と話をするのは容易かった。
メアリ・アンは言葉を顔面通りにうける子だった。
メアリ・アンへの話し方は注意しないといけない、と思った。
ギルバートは自分が斜にかまえて皮肉な言葉をいいがちだから。
メアリ・アンは自然に話す。ギルバートの話も疑義を含まず受け入れてくれる。
そんなメアリ・アンにギルバートは惹かれていった。
お互いに心がほどけてきたころ、レイフからメアリ・アンに電話があり予定より早く戻ってくるという。
メアリ・アンの話は内なる悪意を隠すこともなかった。
ギルバートはメアリ・アンのレイフに対しての疑問にも真剣に答えようとする。メアリ・アンはレイフの悩みに寄り添おうとしていた。
ギルバートは、彼女の心がレイフに向いていることを感じる。
無口になるギルバート。
メアリ・アンは彼の気持ちに気づいていなかった。
メアリ・アンに気づいてもらうために何かをしようと決めた。
その姿を見てメアリ・アンはギルバートの気持ちに気づきありがとうという。涙を流した。
その姿を見てギルバートはいっそう決心を強くした。
感想
この先三人は、どうなるのでしょうか?
青春の一コマが苦しい経験となるのか?
笑い話となるのか?
酸っぱい経験となるのか?
18~19歳くらいの多感な時、三人は“恋”の雰囲気を楽しんでいるようでもあるし、本気のようでもある。
学生から大人へ変わっていく。体も気持ちも変わる。
ギルバート、レイフは前のめり。メアリ・アンは真っ直ぐ。
「二人の少年と、一人の少女」の青春の1ページが、おしゃれに・クリアに描かれています。
できれば仲良く過ごして、その思い出は、振り返る時がくれば笑って話せるものであって欲しいです。
でもそれは中年過ぎのおじさんの考えることで、この三人はそんな事は微塵も考えていないのでしょう。
*最後までお読みいただきありがとうございました。
この小説のイメージが伝わっていれば嬉しいです。興味のある方は是非読んでみてください。他の短編の感想も書いていく予定です。