紫式部はイワシが好きだった-「イワシのミニ知識」栄養ことわざなど

銚子市外川はイワシの漁場として有名。
今回はその「イワシ」の特徴や栄養・食べ方などを調べてみました。
紫式部はイワシが好きだったイワシが江戸時代の社会を支えた。など興味深い話もありました。
ご紹介します。

イワシ(鰯・鰮)とは?

イワシ
イワシ

特徴

マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシなどの総称。普通にはマイワシを指す。
マイワシとウルメイワシは、ニシン科でニシンの近縁種。海魚で水面近くを群泳。
(ウルメイワシは、マイワシに似ているが、丸みを帯び、しりびれはきわめて小さく、腹縁に稜鱗がない。)
江戸時代はイワシを目刺・干物・油漬などに加工し、また鰯油をとり、肥料飼料にもしていた。

*イワシの名前は国字で「弱い魚」に由来している(弱シの転か)。
*魚の中では温和な魚なので鰮(いわし)ともかかれる。
マイワシとは七星イワシともいわれ、体の両脇に黒い斑点がみられる。

鰯油とは、マイワシから採取する帯緑褐色ないし赤褐色の液状油。
不快臭を有し、高度不飽和脂肪酸を多量に含有し、乾性に富む。
硬化油の原料として使われた。

鰯粕とは、鰯の油と水分とを去って乾かしたもの。
日鰯(干鰯)として田畑の肥料に用いられていた。
*昔は水揚げされると早く弱るのと、多く水揚げされるので、ハマチの餌にしていたこともある。
*古代には油が多いイワシやサンマは下賤の者の食べ物とされていた。

広辞苑第六版より引用(一部加筆あり)

生態

・マイワシは年平均水温10~20度の海で生きている。
産卵期は春の2月から4月。産卵場所は太平洋側一帯の沿岸や日本海側だと能登半島周辺。
沿岸域で動植物プランクトンをとり、体長6~12cmの小羽イワシに成長する。
夏場に栄養を取り年末には体長が14cm以上の中羽イワシになり、11~12月に産卵する。
種を絶やさないために約5万から8万匹を産卵する(サケは約3500粒)。
体長18cm以上の大羽イワシはに成長するためには約2~3年かかるという。

イワシは決して他の小魚を食べない。
動植物プランクトンをたくさん食べて育つイワシは、カツオやサバ、クジラなどの格好の餌である。
弱い魚なので集団で泳ぎ、カツオなどに襲われたときは大きな団子状になり形をかえることで協力して身を守る。

平安時代の歌人「紫式部」はイワシが好きだった。
それを示す話が残っています。

紫式部は、あるときイワシを食べてそ美味しさに感動した。
チャンスがあれば食べたいと思っていた。
しかし当時の上流階級の間では、イワシは“いやし”に通じるといって、あまり好ましく思われていなかった。

そこで紫式部は、夫の藤原宣孝(のぶたか)が外出した際に、これはチャンスとばかりに“脂ののったイワシ”を焼いて楽しんだという。
しかし帰宅した宣孝に部屋に残った匂いで気づかれてしまう。
そして「かようにいやしいものを口にするとはなにごとか」とたしなめられた。

このとき紫式部は得意の歌で反発した。

“日の本に はやらせ給ふ いわしみず 
まいらぬ人は あらじとぞ思ふ”

日本一評判が高い石清水八幡宮にお参りしない人がいないように、こんな美味しい魚を食べないひとはいませんよ、と。「いわし水」に「いわし」をひっかけて、夫の小言(こごと)に対して反撃に出た。

紫式部の当をえた答え対して、宣孝もかぶとを脱いで引き下がった。

*「倭訓栞」には、これ以来イワシのことを「紫式部」の「紫」をとって、“女房ことば”で「むらさき」と呼ぶようになったと出ています。

【紫式部】平安中期の女房(高位の女官)。
藤原為時のむすめ、藤原宣孝に嫁したが、まもなく死別。
【石清水八幡宮】
京都府八幡市にある元官幣大社。伊勢神宮・賀茂神社とともに三社の称がある。
【倭訓栞(わくんのしおり)】
国語辞書(93巻)。1777年(安永6)から百余年がかりで刊行。

イワシの栄養、食べ方

イワシの栄養は脳力をアップさせる。
成人病の予防に役立つ。

・イワシに含まれる核酸は、記憶物質のひとつといわれるリボ核酸の合成を促進する成分。
イワシの栄養は脳力をアップさせる、記憶力を増進させる健脳食。

・脂肪中に含まれているエイコサペンタエン酸(EPA)は血管の若さを保つ。
EPAは動脈硬化や心筋梗塞など成人病の予防に役立っている。
*EPAは、不飽和脂肪酸の一種で血液の粘度を低下させて血液をサラサラにする作用があり。
悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす。

・他にもイワシにはビタミンAやビタミンB2、アミノ酸バランスのよいタンパク質が多く含まれている。
・イワシの栄養価のデオキシリボ酸は、イカやサケなどの倍ある。健康と美容にもいいといわれる。

*なによりイワシは頭から食べられるのもいいところ。
カルシウムも多く含まれ栄養がとりやすい。

イワシの色々な食べ方

・地元魚屋では冷凍していないので鮮度がいい、「刺身やたたき」などが郷土料理として出される。
*「たたき」とは、頭を手でちぎり人差し指ではらわたを出し皮と中骨をとって、味噌と生姜や刻んだ青じそを入れて、包丁でたたいてつくる料理。
油がのって美味しいのだが、時期でないと食べれない。

・梅雨の時期6月頃にとれるイワシは、脂がのり旨いので「トロイワシ」といわれる。

・「丸干し」はパイウォーターで洗ってから塩水に浸し太陽の光と熱で適度に干したもの。
・「煮つけ」には梅干しを入れると骨を柔らかくして味に丸みが出て口当たりがよくなる。
・イワシの「さんが」とは、イワシのたたきに味噌・生姜・タマネギなどを加えてフライパンで両面を焼いた料理。

・イワシの「臭みをなくす方法」としては、水洗いや煮るときに酢を加えたり、梅干しや生姜を加えることがあげられる。

【イワシの加工品】としては、つみれ、ゴマ漬け、さつま揚げ、みりん干し、南蛮漬け、甘露煮、角煮。
缶詰では、かば焼き、アビージョ、水煮など、時期により“入梅いわしの醤油煮付け”など。
お菓子は骨せんべいなどがある。

【入梅イワシは】6~7月の梅雨入りの時期にとれるマイワシのこと。
産卵前であり1年で最も脂がのっているから美味しい。

*ここまでお読みいただきありがとうございました。
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