描かれた房総-千葉県立美術館-県誕生150周年-東総作品の感想

千葉県誕生150周年記念事業・房総の海をめぐる光と影のアート展「描かれた房総」が、2023年7月19日から9月18日にかけて千葉県立美術館で開催されていました。

千葉県立美術館
千葉県立美術館

9月千葉市に行ってきました。
あいかわらず33度越えの暑い日でした。
平日なので混んではいませんでしたが、来館者は絶えることなくありました。
注目度の高さを知りました。

展示作品はすべて千葉県立美術館コレクションです。
いずれも歴史的に価値が高く、素晴らしい作品でした。
“そんな千葉県の誇る貴重なコレクション”を簡単ですがリポートします。

「千葉県立美術館」
千葉県千葉市中央区中央港1-10-1 (TEL)043-242-8311
【注意】展覧会はすでに終了しています。

展覧会出品作から一部をご紹介します

東を太平洋、西を東京湾と、東西を海で囲まれた房総半島は、その風光明媚な景観と都心に近いという地の利から、これまで数多くの画家によってその自然や風俗が描かれてきました。
特に鉄道が発展するとその数は増し、浅井忠、ジョルジュ・ビゴーをはじめとする多くの画家が写生地として千葉を訪れました。

「描かれた房総」リーフレット表紙より

県立美術館所蔵の約2800点の作品から、36人の画家による“房総ゆかりの作品42点”が展示されていました。房総を描いた絵画とはどのような作品なのか興味がありました。

銚子を含む千葉県東総地域を描いた作品から

描かれた房総リーフレットより
描かれた房総リーフレットより

*記事内のNoは展示会のリーフレットにあった番号です。

No18(佐原):柴田祐作 白い蔵 昭和63年(1988):紙・水彩

風情ある佐原市街の小さな小野川沿いの蔵
小野川の川面に川の壁、上半分は白い蔵がならぶシンプルな構図。
早い筆勢が特徴的だというが力強さ繊細さもある。
その組み合わせが人の目を引いて離さない。

No19(水郷):石橋武治 水辺初夏 不詳 :キャンパス・油彩

手前に水郷の田んぼ風景、作業している人々。奥に利根川の土手が側高神社に続く。
森とそのむこうにはグレーの空がある。
まさしく水郷の初夏の風景
土手の森と田んぼの色が季節を明解に表している。

No20(香取市)
山本不二夫 美しき佐原河港 昭和15年(1940):紙・水彩

佐原の河港風景を描いている。
造船所周辺で作者の自宅付近でもあるらしい。
手前の河辺の草むらに女性が座ってイーゼルを立てて絵を描いている。
明るい色調でかかれて利根川の繁栄が見えるようだ。

【山本不二夫(明治38年~昭和59年)】
佐原市生まれ。東京商科大学(現・一橋大学)に在学中、日本水彩研究所に通う。
藤田嗣治に師事した。

No21(銚子市)
金子周次 川口風景 不詳:紙・木版

銚子市川口神社あたり・高台から利根川を見下ろした風景。
枯れた木の間から漁村の屋根が並ぶ。
奥には利根川が豊かに流れている。
海流を表現しながら海の荒々しさも感じられる。
家々は黒であり海に薄い青が混じる。
木版らしい独特の雰囲気を醸し出している。

【金子周次(明治42年~昭和52年)】
銚子市に生まれ生涯をすごした。ほぼ独学で版画を学び、銚子の風景をモチーフに犬吠埼灯台や外川の漁港を好んで描いた。

No22(銚子市)
寺田政明 犬吠灯台の見える外川港 昭和60年(1985):板・油彩

銚子市の外川・長崎方面を中心に風景を描いている。
実際には見えない灯台が絵の右奥にある。
力強く面白い構図。シンプルで強い色。
屋根も海も黒っぽい土色であり独特の雰囲気を醸し出している。

【寺田政明(明治45年(1912)~平成元年(1989)】
福岡県出身。洋画家。日本におけるシュルレアリズムを代表する画家。俳優の寺田農は息子。

No23(銚子市)
松本弘二 海鹿島の夏 昭和26年(1951):キャンパス・油彩

銚子の海鹿島、海の家での物販の賑わい。
焼けた海水浴客の肌の色海のブルー、入道雲の白が目に入ってくる。
南国のような雰囲気も感じられる絵。

【松本弘二(明治28年(1896)~昭和48年(1973)】
兵庫県出身の洋画家。高木背水から洋画を学び、黒田清輝に師事。個性的であり画壇では異色の存在だった。

No24(多古町)
堀江正章 耕地整理図 明治34-35年(1901-02):板・油彩

堀江正章 耕地整理図
堀江正章 耕地整理図

多古町島地区から北側の耕地整理の様子。
碁盤の目のように規則正しく描かれた水田が大きく広がる。
遠くには小さな森、丘が薄い色あいで描かれている。
見渡す限り水田のすっきりした構図、北総らしい風景だと思いました。

【堀江正章(安政5年~昭和7年)】
信濃生まれ。工部美術学校でサン・ジョバンニに洋画を学ぶ。和田栄作らと大幸館で絵画を指導。
三原色(赤・青・黄)を駆使した明るい色彩をとり入れた。
旧制千葉中学校にて35年間奉職し後進を育てた。

東総エリアで描かれた作品の感想

構図が魅せる作家のオリジナリティ。
色合いも個性的。画材・タッチ・技法の違い。
作家の熱を感じる作品の数々にただただ感動。
千葉県は豊かな土地・自然に囲まれていることを感じました。
作品の中に時代の色、自然の厳しさ人々の逞しく生きる姿がありました。

*次回は今回の東総地域以外の千葉県内各地で描かれた作品をご紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
*記事の内容については、千葉県誕生150周年記念事業:房総の海をめぐる光と影とアート展「描かれた房総」パンフレットを参考にしました。