銚子市2024-2025年「洋上風力発電」関連ニュースまとめ-環境の変化で事業の見直し?

銚子市洋上風力発電事業について、陸上工事などが2025年から始まる予定でしたが、その音が聞こえてきませんでした。2025年2月に事業者が事業を前に進められないとの発表、どうして?
その理由は、昨今のインフレ・円安・サプライチェーンのひっ迫・金利上昇など事業を取り巻く環境の変化にありました。

*銚子市洋上風力発電事業について、昨年からの動きについてまとめてみました。
かなり長文です、時間のある時に読んでいただけると嬉しいです。

【振り返り】2023年6月三菱商事が銚子市と連携協定締結

銚子市沖は2020年(令和2年)7月に洋上風力発電事業を推進するための「促進区域」に指定され、第1ラウンドの公募で三菱商事グループが発電事業者に選定された。

三菱商事は銚子沖の洋上風力発電事業をすすめるため銚子市に支店を構えている。
2023年6月銚子市が持つ課題の解決や地域創生に向けた連携協定をむすんだ。
内容としては、観光や地域産業の活性化、デジタル技術を活用した市民サービスの向上、再生可能エネルギーを活用したゼロカーボンシテイ推進など。
銚子市は人口の減少や高齢化に悩んでいて、“商社による知見を活かし地域創生に向けた一歩”となった。

*三菱商事が自治体と連携するのは4件目、これまでも熊本県八代市や岡山県倉敷市などで地域のデジタル支援をしてきた。同社は地域創生を通じた新たな産業の創出を目指し、事業の柱となる可能性をさぐる。

事業を進める「千葉銚子オフショアウインド合同会社」とは

2022年4月に洋上風力発電事業を営む会社として、三菱商事洋上風力株式会社、株式会社シーテック、三菱商事株式会社の3社により、地元銚子市で設立された会社。
2022年12月再エネ海域利用法に基づく、公募占有計画の認定、2023年6月にFIT認定取得

2028年の運転開始を目指して、地盤調査や環境影響評価等の許認可手続き、設備設計等の建設準備を進めています。また「一過性ではない、持続可能は自立する」地域共生策の実現に向け、地域の皆さまとの連携した様々な取り組みをしている。
*千葉銚子オフショアウインド合同会社HPより引用。

銚子沖洋上風力発電-イオン銚子より
銚子沖洋上風力発電-イオン銚子より

2024年の洋上風力発電事業関連ニュース

4月に銚子市でシンポジウム開催
「とっぱずれのまち 銚子から考える千葉のカーボンニュートラル」

銚子市は2023年3月に“銚子ゼロカーボンビジョン”を策定している。
同年7月には「脱炭素先行地域検討委員会を設置」して、銚子ならではのまちづくりを進め経済の活性化につながることを目指している。

2024年4月に脱炭素に向けた市全体の歩みを進める目的、住民をふくめた理解をすすめるためにシンポジウムを開催した。
*東京大学教授から地方創生の最近の取り組みが聞けました。
地方が発信する取り組み例であり勉強になるものでした。

【基調講演】東京大学・中村尚史教授「地方からの産業革命
【話題提供】東京大学・加藤孝明教授「現代の潮流と地域課題
【パネルディスカッション第一部】
銚子電力㈱、三菱商事㈱、㈱関電工等による「脱炭素化をテコにした地域貢献」
【パネルディスカッション第二部】
銚子市長、銚子商工会議所、銚子信用金庫、銚子市漁業協同組合、銚子電気鉄道㈱等による「脱炭素化は課題解決、地域づくりのチャンス」
*関連団体との顔合わせや洋上風力発電に向けた決起大会的な雰囲気も感じられました。

*上記記事は、当日の会議資料などを参考にしました。

10月事業者などが県立銚子商業高校にて出前授業

銚子市の洋上風力推進室や事業者である「銚子オフショアウインド」などが、2024年10月に県立銚子商業高校にて出前授業を行い、銚子商業の1年生と海洋科の3年生が授業を受けました。

内容は主に下記のようなこと。
【銚子市の洋上風力推進室
・銚子市のある年の平均風速が5.4メートルで、最大風速が10メートル以上の日が年間167.8日あること。(千葉県内で最多)
・銚子市の陸上側においては、陸上風力発電設備が34基あり、すでに稼働していること。

【銚子オフショアウインド
・洋上風力発電事業の内容としては、屛風ヶ浦の沖合に1基あたり発電出力が約1万3千キロワット、計31基を設置する予定であること。
2028年に運転の開始を計画している。
・計画では年間発電量が約12億キロワット。これは約28万世帯の発電を供給する能力がある。

【銚子市漁業協同組合
洋上風力発電設備の下の海中部分が漁礁となることを確認したこと。
・漁業と洋上風力発電が共存共栄できることを語った。

銚子電力(銚子市と民間で共同で設立した電力小売会社)は、2023年に飯沼小学校などで発電教室などを開いて、洋上風力発電のしくみや再生エネルギーの必要性について訴えた。銚子電力は2022年春から市立小中学校全17校の電力を陸上風力発電7基で発電している事業者から購入して提供している。

*千葉銚子オフショアウインド合同会社は、2024年銚子市内にて沢山の施策を実行しています。
銚子市立病院での省人型ローソン店舗出店。・洋上風力発電関連「親子で自由研究ツアー」開催・洋上風力発電の市民公開講座・銚子港水産祭りへの出店・銚子市第一中学校にて電力授業開催など。
2025年は㈱エナジーO&Mと合同で市内高校生向けのインターンシップ開催しています。

千葉県議会における銚子沖洋上風力発電についての議論

千葉県議会にて風力メンテナンス事業、県内企業参入・地域経済の活性化について議論がすすんでいます。

千葉県として風車メーカーによる勉強会の実施、県内企業に対して風車の構造やメーカーが求める品質等に関する理解を深めてもらう。これまで関わっていなかった企業に対しても自社の技術を活用して新たに参入していただける意欲を促進していく。

風車メーカーに対して県内の各企業の優れた技術をアピールしています。個別の面談も設定し相互の理解をすすめてきています。

・風車等のメンテナンスについては20年を超える長期にわたるものです。
地元の企業の受注を促進できるように地域経済の活性化につなげていきたいと考えています。

・銚子市沖の事業においてはメンテナンスの一部に地元が加われるように、市や漁協、商工会議所が共同で会社を設立しており、発電事業者など協力を得ながら業務内容や人材育成などについて検討を進めています。
*「信田光保(千葉県県議会議員)県議会リポート(7年3月5日版)」を参考にしました。

このような流れの中、
2025年2月、驚きのニュースが飛び込んできました。

三菱商事が全国の洋上風力発電について事業の一時凍結、または事業の見直しを発表

三菱商事が全国にて建設中または建設予定の洋上風力発電について事業の一時凍結、または事業の見直しをするというものです。

令和7年2月3日記事、銚子市洋上風力発電事業者である三菱商事は2月、コスト高騰などにより事業性を再評価することを発表した。
三菱商事は千葉市内で開いた会議の冒頭、直近3年間の資材価格などの高騰や円安の進行などを理由として事業性再評価する必要性を説明した。コストやスケジュールなどを含む事業の根幹となるあらゆる要素について見直すと語った。また再評価の詳細は公表できない、完了時期も未定と語った。

2月4日三菱商事から銚子市に事業の再評価をしている旨の説明がありました。
銚子市からは『20年にわたる洋上風力発電事業は、漁業共生や雇用創出の点で地域活性化効果が高い事業です。何としても事業の継続をして欲しい』と要望した。

*三菱商事は2024年4〜12月期決算に銚子を含む国内3海域の洋上風力発電所事業で522億円の損失を計上。同社は今後の方針をゼロベースで検討すると発表している。

銚子の計画では2028年の運転開始を目指し、今年から陸上工事に入り2028年(令和10)から洋上の稼働を予定していた。秋田沖と由利本荘市沖の2事業もそれぞれ3月に陸上工事の開始を予定しているが、予定通り着工できるかは不明。

ゼロベースでの見直しという発言は、各方面に大きな衝撃を持って受けとめられた。
立地自治体である秋田県男鹿市、由利本荘市はあいついで事業の遂行を訴えた

政府は2月、第7次エネルギー基本計画として、2040年の電源構成において、再生可能エネルギーを4~5割にすると閣議決定した。洋上風力発電は再エネ導入量拡大に大きな役割を持っている。
洋上風力発電事業は「再生可能エネルギーの切り札」であり、国の動きが注目された

国は洋上風力発電事業に“価格調整スキーム”を導入する方針を示した。

2022年4月からFIP制度がスタートしている
FIP制度は「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」において定められている。

銚子沖の第一ラウンド公募時はFIT(固定価格買い取り制度)での入札でしたが、国はその後の経済環境の変化を踏まえて高値で売電できる新制度への移行を検討していた。

国は3月1日にR1事業のFIP(フィードインプレミアム)転換を提案した。
FIP制度は資材価格などの上昇分を40%程度まで電力の販売価格に反映できる仕組み。
そのためには事業者からの計画変更申請と認定が必要だが、この救済策によって事業環境は大きく改善する。

FIP制度とは
認定を取得した再生可能エネルギー(再エネ)発電事業者が卸電力市場などで電気を売った際に、売電価格に一定のプレミアム(補助額)が上乗せされて交付される制度。FIP制度は、再エネによって発電された電気の収入を市場価格を連動させることで既存のFIT制度(固定価格買取制度)の問題点を解消するとともに、将来、他電源と共通の環境下で価格競争しうる再エネ主電源化の段階的措置に位置付けられている。

2025年3月21日記事
経済産業省は今春に洋上風力発電の公募指針を見直す方針

経済産業省は今春にも大規模な洋上風力発電の公募指針を見直す方針を明らかにした。
すでに落札者が決まった海域を対象に、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT) から電力市場価格を参照して補助金を決める 「FIP」に変更する「FIP転」が可能と明記する。
三菱商事が落札したラウンド1(R1)の採算が大きく改善する見込み

*2025年3月21日日経より引用

2025年3月29日記事
銚子市は洋上風力事業継続について銚子オフショアウインドに説明を求めた

千葉県銚子市沖の洋上風力発電事業をめぐり、銚子市や漁業団体などは28日に開いた協議会において、三菱商事などが出資する事業者である『千葉銚子オフショアウィンド合同会社』に対して計画の実現や丁寧な説明を求めた。

説明を受けて、銚子市の越川信一市長は「企業努力により事業性をしっかり確立し、なんとしても実現していただきたい」と発言。県漁業協同組合連合会の坂本雅信代表理事会長は「協議会の中で再評価(の詳細)について話がないことは我々の不安を募らせる」と指摘した。「速やかに結果を出し、丁寧に説明してもらいたい」と求めた。

*2025年3月29日日経新聞より引用。

2025年4月、国があらたな洋上風力発電事業についての支援策を発表

三菱商事グループが落札したFIT価格は、FIPの基準価格となる。FITの場合は発電した電力は一般送配電事業者がすべてFIT価格で買い取ることになるため、売電収入は固定される。FIPであれば、コーポレートPPAなどによる相対取引が可能になるため売電収入の増加が期待できる。

【コーポレートPPAとは】
企業や自治体が発電事業者から再生エネルギーの電力を長期に購入する契約。
契約期間が通常10年から25年と長期にわたり再エネ電気を安定的に調達できる。消費企業はPPA事業者から一定期間以上の電力を購入することで、初期投資をしなくても再エネ設備を導入することになる。

*これら一連の支援策により、事業者が一時計画の見直しを余儀なくされている現状を打開するきっかけになるといいですね。ただこの政府の支援策は三菱商事グループへの事実上の救済と見る業界関係者は多いようです。
これからどう進むのか注視したいです。銚子市洋上風力発電事業が再開されることを期待しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
*新聞・WEB・メディア、会議資料などから引用・参考にしてまとめています。
(注意)自分で調べた記事です。専門家ではありませんので、足らなかったりおかしな点があるかもしれませんがご容赦ください。もっと詳しく知りたい方は各団体のHPや資料などで調べていただけますようお願いいたします。

このブログでは、銚子市洋上風力発電について最初から追いかけて記事を書いています。
ブログ内にて「洋上風力発電」で検索していただけると出てきます。よろしかったら読んでみてください。