マテリアルについて考えた-「職業としての小説家」村上春樹著-感想1【ネタバレ有り】

第5回の「さて、何を書けばいいのか?」を読んでみた

この回は何を書くべきかについて書いているのですが、
村上さんは、小説を志す人のやるべきことに関することを中心に書いています。

小説家を志す人が「やるべきこと」を順番に書き出してみました。

①、最初にあげているのは「一冊でも多くの本を読むこと」です。
読むことで小説の成り立ちを体感として理解できるようになる。

②、自分が「目にする事物や事象を観察すること」(習慣にする)

③、②について「あれこれ考えをめぐらせる、結論みたいなものは先送りする。

④、(③で考えた)「ものごとのありようを、素材=マテリアルとして、なるたけ現状に近い形で頭にありありと留めておく。」いいかえると、

自分が目撃した光景を、出会った人々を、あるいは経験した事象を、あくまでひとつの「事例」として、言うなればサンプルとして、できるだけありのままの形で記憶に留めておこうと努めます。

P123

⑤、ここまでのまとめとして、

小説家を志す人のやるべきは、素早く結論を取り出すことではなく、マテリアルをできるだけありのままに受け入れ、蓄積することであると僕は考えます。

P124

⑥、⑤の注釈として、たくさんの記憶を情報処理(最小限のプロセス)することについて書いています。)

記憶に留めるのは、ある事実の(ある人物の、ある事象の)興味深いいくつかの細部です。
~そこにある個別の具体的なディテールをいくつか抜き出し、それを思い出しやすいかたちで頭に保管しておく。

P125

⑦、⑥が最小限のプロセスだという。
「記憶の自然淘汰によって、消えるべきものは消え、残るべきものは残る」という。

⑧、(そして⑦でできた)具体的細部の豊富なコレクションが小説を書く時に重宝する

⑨、ここまでのまとめとして、

脳内キャビネットに保管しておいた様々の未整理のディテールを、必要に応じて小説の中にそのまま組み入れていくと、そこにある物語が自分でも驚くくらいにナチュラルに、生き生きとしてきます。

P127

⑩、そしてジェームス・ジョイスの言葉を引用して「イマジネーションは記憶」のことだといい。
イマジネーションとは「有効に組み合わされた脈絡のない記憶」であり、それ自体の直観を持ち予見性を持つようになる。そしてそれこそが正しい物語の動力となるべきものだという。

⑪、さらにP130では、“使いみちのなかったマテリアルを使ってエッセイを書く”ということ。
P131では、スピルバーグの映画E・Tを取り上げて、
“材料そのものの質はそれほど大事ではなくて~、日常的で素朴なマテリアルしかなくても、簡単で平易な言葉しか使わなくても、もしそこにマジックがあれば、~洗練された装置を作り上げることが出来る”という。
(*ここでの装置とはE・Tに出てきた通信装置のことです)

⑫、村上さんは“最初は書きたいという小説の実のある材料はなかった”と言います。
“書くべきマテリアルのないところから、立ち上げていく才能もなかった”という。

⑬、(ここからマテリアルに形容詞がつくことで、少し抽象的な文章になっていきます)
限られたマテリアルで物語を作らなければいけなかったとしても無限の可能性があるということ、軽量級のマテリアルにしても、その組み合わせ方のマジックを会得すれば、いくらでも物語を立ち上げていくことができる”という。

⑭、最後にまとめるような文章がありました。
“視点を変更すれば、”

発想を切り替えれば、マテリアルはあなたのまわりに、それこそいくらでも転がっていることがわかるはずです

P140

「健全な野心を失わないことが大事だ」という

⑮、回の最後にこの回「何を書くべきか」の結論を語っています。

もしあなたが小説を書きたいと志しているのなら、あたりを注意深く見回してみてください。

P143

これが村上さんが言いたかったことだといいます。
独特の言い回しで文章が語られていました。すべてを理解するのはむずかしそうです。

*次ページは、ここまでの感想になります。