銚子市沖に洋上風量発電が立ち並ぶ風景が、実現可能な未来になってきました。
世界では、近年従来の陸上風力発電のみならず洋上に風車を設置する洋上風力発電が急成長しているようです。
日本の特徴である長い海岸線や広域な海域などを活かした洋上風力発電は、とても有望なエネルギーであり挑戦が始まっているのです。
洋上風力発電の「一般的なメリット・デメリット」について調べてみました。
*私は専門的な知識はありませんので、知り得たことだけを書いています。足りない点はご了解ください。
詳しくは本や関係機関のHPなどでご確認ください。
洋上風力発電のメリット
①人間がコントロール可能な単純な原理。自然が有するエネルギーを人工的に電力に変換することなので、事故が起きたときのコントロールもしやすい。
②技術の進歩で1基あたりの設備容量が大きくなったこと。スケールメリットが得やすくなった、コスト低減が可能になった。
③陸上風力に比べて海上は常に安定した風が吹いているので、設備利用率が高い。
④陸上風力発電のように低周波騒音を発生しない。
⑤太陽光発電に比べて発電単価が安い。
⑥地域振興(発電関連事業・観光など)になり雇用の創出が期待できる。
洋上風力発電のデメリット
①洋上風力発電固有の技術開発課題がある。「規模の経済性」と追求するため、可能な限り風車を大型化、羽を軽量化・低騒音化し、構造も強化する必要がある。
②塩害によって回転する機械や電子部品などが故障しやすいので維持管理費がかかる。メンテナンス船も必要。
③海上では風や波、水面下では潮流や地震波、地盤部分では土壌浸食もすすむ。
④洋上変電設備及び海底ケーブルが必要。
⑤先行的に海域を利用している既得権者との調整が必要。
たとえば、海底通信ケーブルが敷設されているとか、外国船の航路、航空機の進入経路など。
⑥現地漁業従事者との利用調整が必要。
コストは?
コストは洋上風力発電の設置場所、設計方法、規模(サイズ)、設置数によって変わってきます。
また稼働率、メンテナンス料、電力の買い取り額など色々な要因が関係してきますので、一概には言えないようです。
それと「日本は欧州とは気象や海象条件が異なるので、建設コストやメンテナンス費用など実用化に向けてのコスト面の課題は少なくない」ようです。(採算性は国による制度設計だけでなく発電事業者の考え方にも依存します)
*ちなみに世界で主流のサイズ8MW(メガワット)の洋上風力発電ならば、年間の発電量は約2100万キロワット時。1基で約4700世帯分の電気を賄うことができるそうです。
漁業従事者との協業は可能なのか?
これが一番難しいと言われています。
外国の先進国でも洋上発電を推進する条件として「地元の漁業従事者がプロジェクトに反対していないこと」を明示している国がほとんどです。
*欧州では設置場所を岸から30~40km以遠を目安にしているようです。(漁業従事者との調整が不要になる距離のため)
「2006年デンマークのエネルギー庁は、洋上風力発電所が環境に与える影響についての調査報告は、2003年に運転を開始したホーンズ・レブなどの風力発電所では魚類・海産哺乳類・鳥類などに対する影響はない」としています。
また「ノルウェーでは底生魚への影響をしらべて、基礎部分には有用魚種の餌料となる小魚が集まっていることが確認されました。集魚装置の可能性もあるとの報告でした」
「日本でも北海道瀬棚町「風見鶏」では地元の漁協組合の提案で昆布養殖のための海中林や魚礁などが設置されています」
風力発電設備は災害に耐えられるのでしょうか?
①地震と津波
「2012年現在、日本では津波に対する体系的な実験データーは存在していませんが、2011年の東日本大震災の際に神栖での実証例はありました。」
「2011年3月、茨城県神栖市にある「ウィンド・パワーかみす第1洋上風力発電所」は東日本大震災の際、震度6の地震と5mの津波におそわれました。しかしその際、破損したり倒壊した風車は1基もありませんでした」
*地震発生時、地震地域内の風車は振動や系統連携状態の異常を検知して自動停止した。巡視点検して順次運転再開をしたそうです。
【ウィンド・パワーかみす第1洋上風力発電所】
・神栖市南浜の沖合40m~50mに、2010年6月より発電を行っている。日本初の洋上風力発電所です。
・発電機:日立製作所・富士重工業製
2MWが7基で1万4000KWの発電能力、約7000世帯の年間使用電気量をまかなうキャパシティを備えているとのこと。
・タワー部高さ:60m、3枚羽の長さは各40mです。
なお現在は、第1洋上風力発電所所の隣に「ウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所」がつくられて8基が稼働しています。
*茨城県HP(情報039記事)を参考にしました。
「世界風力エネルギー協会は、2011年3月25日ウィンド・パワーかみすの洋上発電設備7基が地震と津波を乗り越えて生き残り、電力の供給を続けていることを伝えました。当時の事務総長は高い技術力をほめたたえた」そうです。
また風車は建築基準法に基づいて作られていてビル並の強度を持っています。
*平成22年3月銚子沖においても、「洋上風力発電等技術研究開発」が始まってまもなく「風車・観測タワー基礎掘削割石投入過程」において、東日本大震災の3.11津波にあっています。
②台風災害
日本では毎年のように強力な風と雨をともなった台風が襲いかかります。
そのため「国土交通省は、風車を建築物として建築基準法を適用して通常の建築物と同様の強度を求める」ようになりました。
*台風の風や波、雨などが風力発電設備にあたえる影響は主体設備、付帯設備、基礎、ケーブルなど多岐にわたり、実証実験により得られた詳細なデーターにより分析・研究が進んでいるそうです。
環境対策とは
「洋上風力発電に関して法令に基づいて導入している国は米国・韓国・中国・カナダでした。」(2012年当時)
上記の国「共通の評価項目」は以下の4つです。
・海洋動植物への影響
・渡り鳥への影響
・漁業への影響
・景観への影響
欧州では環境アセスメントが義務つけられています。
日本でも環境省がその内容について各実証研究事業(銚子など4カ所)で基礎的調査を行い検討しています。
その調査対象としては、
海草・海藻・動植物プランクトン・付着生物・底生生物・魚介類・海産哺乳類・海産爬虫類・鳥類になります。
コストだけでなく自然環境や人体に与える影響も大切にされているんですね。
*NEDO国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」ホームページ、「洋上風力発電」次世代エネルギーの切り札 岩本晃一著 B&Tブックス 日刊工業新聞社 より引用、参考にしました。
銚子市役所、企画財政課洋上風力推進室作成「洋上風力発電事業について」また風力推進室提供「実証研究報告会資料」を参考にいたしました。
最後に洋上風力発電に関して思ったこと
2011年は東日本大震災で原子力発電施設が津波で被災して停電になり、国企業も必死になって節電して乗り切った経験が残る時期でした。そしてそれから9年が経とうとしています。
今政府は洋上風力発電の実証実験を本格化して、その取り組みを本格的に進める段階に来ています。
昨年台風被害によって巨大な鉄塔が倒れて停電など千葉県は大きな被害を受けました。
すべてを巨大発電設備などから引く電力供給の手段は、地産地消での自然エネルギーに変えていくことで、リスクの分散もはかっていくことも必要だと思いました。
その一つの足掛かりとして、千葉県の銚子市沖に洋上風力発電設備が出来るとしたら、何か災害が発生して電力の供給がままならなくなったとき、千葉県や首都圏のエネルギーの代替電力として機能していくのではないかと思います。
もちろん銚子市の地域経済の原動力になりうると思いました。課題はたくさんあると思いますが、正式な指定から洋上風量発電の誘致、事業が軌道に乗ることを期待したいと思います。
*最後までお読みいただきありがとうございました。