銚子市洋上風力発電事業が2025年に本格的に始まります。まずは陸上の工事や本体工事から。
名洗港の岸壁工事?も一段落したようですので、これからの事業スケジュールを確認。
神栖市鹿島港も加わってどう進んでいくのか。自分なりにまとめてみました。
銚子市洋上風力発電2028年操業開始を目指して
洋上風力発電事業スケジュール
銚子市洋上風力発電事業の取り組み方針については、千葉銚子オフショアウインド合同会社(三菱商事洋上風力・三菱商事・シーテック)から、令和4年11月に事業スケジュールが発表されています。
・陸上工事
送電線などの陸上送変電設備工事は2025年から始まります。
・本体工事の着工は2025年から始まります。
(風車基礎・海底ケーブル設置、風車据付、試運転)
・漁場実態調査・漁業影響調査。地域共生策の協議・実施。
着床式の風車31基が銚子沖の約4000ヘクタールの対象となる区域に設置されます。
発電出力は40万キロワットです。
・操業・撤去(約24年)
運転・保守、地元企業活用強化、地域共生策の改善・深化。
漁場実態調査・漁業影響調査。撤去計画策定・着工。
*2028年9月から2025年1月まで約24年間の操業が予定されています。
「名洗港」の整備
名洗港は、銚子市沖の洋上風力発電の促進区域に隣接する港湾であり、建設補助・維持管理の拠点としての機能確保が求められている。
名洗港(銚子市)は、洋上風力発電設備のメンテナンスを担う港です。
*名洗港の整備は「千葉県」が手がける事業です。
本体工事着工予定である2025年に向けて、今年度2023年度からは「発電施設のメンテナンス拠点」として整備がスタートしています。(建設工事の拠点は鹿島港(茨城県神栖市)です。)
名洗港は、建設補助と維持・管理のための拠点港を担当します。
名洗港の岸壁や物揚げ場の設計、港湾防波堤の地質調査などが行われています。
*下記の写真は2023年11月末ごろの名洗港です。
名洗港は、2023年度から5年間で、新たな岸壁や埠頭・航路などを約48億円かけて整備します。
本格的な工事は来年度(2024年)以降になります。
事業期間:令和5年度~令和9年度。
総事業構成施設:係留施設(物揚場)、既存岸壁改良、外郭施設(防波堤)など。
課題である漁業との共存ですが、
協調を目指して2022年から3年間にわたって調査が行われています。
洋上風力発電施設が建設される予定である海域を中心にして、銚子市漁業協同組合が実施するのは「水中ロボットによる調査、潜水調査など」で、その調査で漁場の見える化を図っていく事業を展開していく。
2023年はその2年目であり、促進区域内に実証用の漁礁を5箇所設置してモニタリングを開始しています。この漁業実態調査の結果を踏まえて、漁業活性化策を検討していくとのこと。
そして海底でのイセエビの漁礁試験も動き出す予定になっています。
銚子市の洋上風力関連に対しての取り組み
銚子市は関連事業として2023年当初予算として1億6000万円を盛り込んでいます。
事業内容としては、・漁業との共生・振興の取り組みを促進させるために、燃料費の助成や海上に風車が並ぶ景観を生かした観光ビジョンの立案。地域の再生エネルギー普及を担う地域おこし協力隊への費用負担です。
・銚子市は、C-COWSと地域おこし協力隊により、エンジニアの育成やトレーニング施設設置検討、視察受け入れなどを行っています。
*C-COWS(銚子共同事業オフショアウインドサービス)は、銚子市漁業協同組合と銚子商工会議所、銚子市の3者で設立された企業です)
・三菱商事と銚子市は2023年6月に、銚子市沖の洋上風力発電計画に伴い、「地域創生に関わる連携協定」を交わしている。銚子市立病院内に12月にローソンが開店(半無人営業)したのも、地域の問題解決をする実証実験店であり、少子高齢化を見据えた取り組み。(ローソンの親会社は三菱商事)
・銚子市漁業協同組合と三菱商事の担当者、銚子市が2023年10月に銚子商業高校で洋上風力発電事業に関する出前授業を実施。(朝日新聞10月15日より)
・今後千葉銚子オフショアウインド合同会社(三菱商事洋上風力・三菱商事・シーテック)と連携した活動もあると思われます。
洋上風力の組立拠点として「鹿島港」と、「名洗港」の連携が重要
現在、茨城県神栖市にある「鹿島港」は、“銚子市沖洋上風力発電建設の前線基地”として整備が行われています。
洋上風力発電設備の設置・維持管理においては、重厚長大な資機材を扱うことが可能であることが必須条件。そのために“耐荷重・広さを備えた埠頭”が必要になります。
鹿島港は銚子沖にも近いことから、海洋再生エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)として指定されたのです。
国の直轄事業として鹿島港の外港地区(鹿嶋市)において整備がすすんでいます。
事業期間:令和2年度~令和5年度。総事業費:94億円。
整備施設:岸壁の整備、航路・泊地、地耐力強化。
*高度な維持管理ができることや“広域に展開すること“も求められています。
参入時期の異なる複数の発電事業者間の利用調整なども必要です。
【茨城県神栖市】
茨城県の東南端に位置し、太平洋と利根川に囲まれた温暖な気候のまち。
2024年2月末現在の人口は94,223人。
神栖市は風力発電に適した風が一年を通して吹いています。以前からウィンド・パワーかみすなど数社により43基(2020年10月現在)の洋上風力発電施設が稼働しています。さらに洋上風力設備(風車)を増やす計画もあるとのこと。
また「ウインド・パワー・グループ」は風力発電施設の保守・点検にかかわる人材を育成するトレーニングセンターを2024年に開設する予定。(読売2024年1月)
なぜ「鹿島港」と「名洗港」の連携が大切なのか?
その大きな理由は、洋上風力発電設備の設置及び維持管理にあります。
風力発電は約2万点の部品による組立産業です。
風力発電を構成する部品としては、たとえば、歯車、軸受、主軸、羽根ブレード、発電機、変圧器、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維、電力ケーブルなどがあげられます。
回転機械なので定期点検が必要であり、保守要員も必要です。
さらに、海中に基礎土台を設置するため、土木分野の企業、工事用船舶の製造や輸送関連の企業の参加が必要となります。
ドイツでは風力発電関連企業が集積した都市もうまれているそうです。
その都市ではメンテナンスサービス・ファイナンス・法律事務所・ロジスティクス・展示会主催・人材の研修や訓練を担う企業・学校・研究所も含まれます。
以上のように様々な企業が生まれたり集まってきます。
名洗港は建設補助と維持・管理のための拠点港の役割を担うのであり、建設工事を担う鹿島港との連携が必要です。
洋上風力発電設備は様々な企業が参加していく大きな産業。
建設やメンテナンスは大手企業だけでなく地元企業の参加や新たに入ってくる企業の参加もあります。サプライチェーンの構築、地域産品に限らず、観光含め人の流れも活発になってきます。
当然地元の税収の増加も見込まれます。
銚子市・漁業協同組合・商工会議所などが同じ方向を向いて進んでいます。
新たな産業をつくりだすには、役割分担や協力体制が重要になります。
【銚子市沖洋上風力発電】
着床式洋上風力発電。40.3万kW(1.3万kW×31基)
2028年9月に運転開始が予定されています。
(建設は2025年に着工し3~4年の予定)
(注意)あくまで個人的にあつめた2023年時点の情報です。
正確で詳しい情報は千葉県・各自治体や関連企業のHPなどをご確認ください。
*最後までお読みいただきありがとうございました。
*「洋上風力発電 次世代エネルギーの切り札」岩本晃一著 日刊工業新聞社刊を参考にしました。
また朝日新聞、読売新聞、ヨミダスから一部引用。「しだ光保千葉県県議会議員の県議会リポート」、神栖市の広報誌などを参考にしました。