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象イメージ1

人を虜にして離さないものの怖さ-「踊る小人」 村上春樹著 -感想


村上春樹著 螢・納屋を焼く・その他の短編 新潮文庫より
【注意】ネタバレあります。読む前に注意してください。




民は昔から楽しみとして「踊り」をしていました。お祝いや事あるごとに。また苦しみを忘れる手段でもありました。
「権力者に踊らされていること」も多かったはずです。そして怒りが生まれ革命が起きたのかもしれません。







時代と場所




時代】不明
【国】象工場を持っている国、北は地方で南には首都がある(中心地?)。ジャングルには象がいる。葡萄が採れる?
数十年前に革命が起き皇帝が亡くなった。
【舞台】象工場(国の南にある)、近くに森がある。町の広場、古い酒場。




登場人物




【僕(主人公)】象工場に働く若者、工場で今は「耳つくりセクション」で象の耳を造っている。自宅では猫を飼っている。バスで工場へ通う。




【小人】無一文で国の北から南へ来た。見た目はは若者より2~3歳上。しかし革命前に生まれているので老人のはず。
最初象工場で下働きをしていたが、踊りが上手なので、酒場で踊り皇帝の前でも踊った。革命が起こって皇帝が亡くなり森の中で暮らしている。
(彼の踊りは人の心を自由に操る。数十年前、皇帝を失脚させた罪?で革命軍に追われている。)
*踊っていないときは弱々しい、新しい活力が必要だという。




【娘】僕(主人公)があこがれている女性工員、第8工程で象の足を作っている。 大変な美人、とてもほっそりしていて中世の絵に出てくる少年のようないでたち、髪の毛はちりちりとして長く、瞳は海のように深かった。踊りが上手。




【工場の年取った職人】皇帝も革命軍も嫌い、いやいやながら僕(主人公)に昔の小人の情報を教えてくれる、第6工程所で植毛工として働いている。




あらすじ・導入




僕(主人公)は夢の中で不思議な夢を見る、「踊りの上手な小人」に広場で出会う。「踊りませんか」とさそわれる。小人は踊りながら身の上話をする。
踊りたくって北の国から南(ここ)に来た、「北の人間は踊り方を知らないし、踊りなんてものがあることじたいを知らない」という。そして革命が起こり小人が町を追われたこと。
なぜか僕のことも知っている。

僕(主人公)は象工場に勤めていて「耳つくりセクション」で象の耳を製造している。僕は、第8工程(象の足を作っている)の美人娘が好きだ。
僕(主人公)は小人の予想通り、夢の中でまた小人にあう。そして奇妙な契約を結ぶことになるのだ‥‥。




テーマを考えてみた-人間の欲望の深さ・弱さ




非常に奇妙な話だ。実際にあった話をモデルにしているようでもあり、中世のおとぎ話のようでもあり、また現実の国の怖い話のようでもある。




最初に読んでも話がうまく入ってこなかったので、しばらく時間をおいてから読んでみた。まず印象として浮かんできたのは「人間の欲望の深さ」「人間の弱さ」というテーマを伝えているのかなという事です。




欲の深さから、分かっていても「やってしまう」「のってしまう」のが人間の弱さです。小人はそれを引き出そうとしているのか、別に他意はないのに人間が勝手にその網に引っかかってくるのか、は定かではありません。

主人公は彼女と付き合いたいという欲のために、小人の「うまい話」にのってしまう。もちろんのらないことも選ぶことは出来るのだけれども、夢の中のことだからと言い聞かせて小人の話にのる。
その契約に失敗したらどうなるのか、分かりそうだと思うのだが。そういう僕(主人公)の様子は、欲で盲目になっていくようで読むのが怖くなってくる。




【革命の意味】
恐らくこの小説での革命の意味は、フランス革命に代表されるように「従来の被支配階級が支配階級から国家権力をうばい、社会組織を急激に変革すること」であろう。出典:広辞苑第三版




この国は象をつくっている。象供給公社が買い取りジャングルに放つ、保護している?この国の動物と思われる。国の体制は「革命」という言葉から社会主義国を想像する。
象を作るという工場は「象を使っている、輸出している」という記述は無いので、産業とはいえない。少なくとも僕(主人公)と娘は若いので、若い人の働き場所でもある。




中国の漢詩に何か関係あるのか?




この小説に出てくる小人(こびと)は漢字の読み方で小人(しょうじん)とも読める。小人と君子と革命という言葉でWEB検索していくと中国の易経が出てきて、その漢詩に何か関係があるのかなと想像し調べてみた。




【易経(えききょう)】
五経の一つ、五経とは先秦時代に存したと伝えられる六経のうち、亡失した楽経以外の経書。すなわち、易・書・詩・礼・春秋の五経。
出典:広辞苑第三版
【先秦時代】
中国史で、前221年の秦による統一国家成立以前の時期。殷・周より戦国末に至る。




「君子豹変 小人革面」(くんしひょうへん しょうじんかくめん)という易経の中に在る漢詩『君子豹変』の意味は、広辞苑をひいてみると「君子はたとえあやまっていてもそのあやまちをすぐに善にうつることにいう。俗に態度が急に悪く変わることに使われる」と書かれている。
しかし三省堂辞書ウェブ編集部「言葉の壺」によると『君子豹変する』とは「優れた人間は過ちは直ちに改め速やかによい方向に向かう」という。
随分と違う意味になります。




そしてこの後に続く『小人は面を革(あらた)む』については「小人は表面的に態度を改め君子の言うとおりに従えばよい」という意味がある。




【君子】
高い官職にあるもの、徳行のそなわった人、品位の高い人、人格者。
出典:広辞苑第三版




この漢詩については色々な解釈がある。
もしこの漢詩と「踊る小人」のイメージが関わっているとしたら、この小説は、この漢詩「君子豹変 小人革面」(くんしひょうへん しょうじんかくめん)の意味にある「矛盾(相反する解釈)」を指して書いたのではないかと思いました。*前の段落で書いています。




漢詩 『君子豹変  小人革面 』 の解釈




言葉遊びになってしまうという指摘を受けるかもしれませんが、 「君子豹変 小人革面」の解釈、前4文字と後ろ4文字の解釈を入れ替えると、




小人(しょうじん)が豹変して、君子がそれに従った、という話に解釈を入れ替えているのではないかということです。




漢詩前半の「君子豹変」の意味が、辞書によって意味が違うことから発想したのではないか、ということです。
再度書きますと、一つは君子は『あやまっていても態度が急に悪く変わること』だといい、もう一方は『すぐに過ちを認めて良い方向に向かう』といいます。真逆なので、君子はその時の都合によって態度を変えている意味にもとれます。
そして小人はそれに振り回されている民の象徴?




ここまでで推測すると、小人は民の気持ちを象徴するものとして登場し、無能な君子に対して怒りを覚えて革命を起こした
『その欲望の虜』になった小人は、追われて森の中を転々とするこことになる。そして数十年後、その欲望を諦めていない。今度は工場の若者(主人公)に狙いを定めた。




この国の政治についての描写はないので、この国がいい国なのか良くないのかが不明、なので小人のしていることは「悪政が続く国を良くする改革」ともとれるし、「外国統治下の属国からの脱却」ともいえる、「悪意(くにをあやつる)をもった改革」もとれる、そして「ただのいたずら」ともとれるのです。




感想




小人は野望を持っていて真剣に若者の体を奪おうしている。野望は「国を統治することか」、そのために体が必要なのだ。
小人は躍ることで「人の心を操る力」を持っているので、若者の体を得ることは難しい事ではないはず。なぜ「若者の娘への欲望」を利用して策略をたてたのか。
そこには「踊り」が関係していそうです。冒頭書いた「踊り」の意味とは違います。




小人を動かしているのは、楽しみとしての踊りではなく、新しい体を得て「国の権力を自在に動かしたい」という権力欲、「逃れられない欲望(踊り)の虜」になっていると言った方が、正確なのかもしれない。
そして踊り(欲望)に取りつかれた人の末路を描いている。




「夢の中の話」なので真剣に解説する必要もないのかもしれません。しかし小人の言動が気になってしまう。結果何回か読んだのですが、何度読んでも読後感がはっきりとしない。
思うがままに読んでみて、思ったことを語ればいいと思います。ただその思うがままに読むこと自体が難しいです。(様々な疑問が浮かんで邪魔します)

*うまく書けなくて分かりにくいところが多々あると思います。小説を読んで確認してみてくださいね。