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ねこ04

猫好きにおすすめの1冊-文豪が一気に身近になる-文豪たちが書いた「猫」の名作短編集-感想1

文豪たちが書いた「猫」の名作短編集  彩図社文芸部編纂
彩図社刊
 を読んだ感想になります。

文豪たちが猫を題材にして様々な小説・エッセイを書いている。15名の昔の作家がどのように「猫」を描いているのかとても興味がありました。
読んでみると身近にいる「猫」をテーマに書いているので、“文豪が近くに降りてきてくれたような親しみ”を感じました。「文章に登場してくる猫」が「今も変わらない猫」であるのは間違えない。だから猫は「筆者と読者をつなぐ共通の話」になっています。

人物だとか場所などの生活は、時代によって移り変わりますが、「猫(ねこ)」そのものは変わらない。人の猫に対する愛情や様々な思いは時代が変わっても同じなんですね。小説を読みすすめると“自然に登場人物と共鳴・同期している”のが不思議です。
文豪の小説は何か敷居が高い。言葉を大切に文章がしっかりと書かれているもので今の娯楽小説に比べれば難しいのは確か。名前負けして先入観を持って読むからかもしれません。しかし猫を通してみると「文豪」も同じ人間なんだと気づくのです。

*本の中から数編の感想と著者の略歴を書いています。なるべくネタバレにならないように書いていますが、若干の内容説明はご容赦ください。

文豪たちが書いた「猫」の名作短編集 より

内田百閒著 「クルやお前か」 

主人公の家族と病にかかった飼い猫の「クル」の話。
なんとか「クル」を長生きさせてあげようとする主人公と妻、女中の家族3人。その様子がとても細かく丁寧に描かれています。
ノラだった「クル」が家に来てから5年3か月。喧嘩っ早くて我儘で自分勝手で質が悪い猫「クル」が死んでしまいます。主人公は振り返ってはいけないのに事あるごとにクルを思いだす。クルはそれだけ愛おしいものでした。その悲しみに人間と猫の間に境界はありません。猫を飼ったことがある人であれば胸に響くことばかりだと思いました。
晩年のクルの周りを取り囲む家族やドクトルの様子がとても温かいです。いつの間にか自分もクルに対して感情移入していました。

内田百閒:うちだしやつけん(1889-1971)
小説家・随筆家。名・栄造。岡山県生まれ。東大卒。夏目漱石の門に出入。夢幻的な心象を描き、また人生の詣かいと悲愁を綴る。
*出典:広辞苑第三版

谷崎潤一郎著 「ねこ」

筆者が“いかに猫をねこが好きであるか”を書いている?エッセイ。
猫族から始まって文章が楽しい。猫と犬と比較している部分もある。エッセイは猫について延々と書き綴っているわけではなく色々な犬のエピソードも交えていて、猫については遠回りして書いている。まるで猫に心が盗まれていることを他の人に知られたくないようで、その筆者の心持が面白い。
少し控えめな猫表現に、筆者の“猫に対しての愛情”が現れている。その「その温かさ」がじんわりと伝わっくる、それが楽しい。

谷崎潤一郎(1886-1965)
小説家・劇作家。東京生れ。東大中退。第2次「新思潮」同人。「刺青(しせい)」「少年」など、耽美と背徳の空想的な世界を華麗に描いたが、大正後期から日本的な伝統美に傾倒し、王朝文学の息吹を現代に生かした新しい境地を開いた。作「春琴抄」「細雪」など。
*出典:広辞苑第三版

太宰治著 「ねこ」

9行しかない短いエッセイ。詩のような文章の中に確かに「ねこ」がいた。しかも最後には「その本質」を書いているのも凄い。さらりと書いているのに筆者の気持ちも想像される。ユーモアも隠れていた。楽しいし面白い。
*あまり書けないので読んで確かめてください。

太宰治(1909-1948)
小説家。青森県生まれ。日本浪漫派の作家として出発。戦後は虚無的・頽廃的な社会感覚を作品化。「斜陽」「人間失格」「桜桃」など。自殺。*出典:広辞苑第三版

佐藤春夫著  「愛猫知美の死」

筆者が最近死んだ愛猫「チビ」について書いている。チビは“うすぎたない身で我がもの顔に横行していた猫”だったが、次第に飼い猫になり“貴重な存在のように思われて愛するもの”になった。その出会いから別れまでを丁寧に書いている。
筆者とチビとのエピソードは愛情にあふれて楽しい。小さい時から壮年にかけての筆者とチビの生活は微笑ましい。しかしチビが年をとり老衰していく様は普通ではいられない。筆者はチビが死んだ後は悲しくて泣けて仕方ない。 愛おしむように書けば忘れられると思い書いているが、逆に愛猫のことを思いだす。
悲しみは知り合いの人が死んだときよりも悲しいという。

愛猫が老衰していく時の行動や様子の変化は細かく書かれているがゆえに、とてもせつなく悲しい。筆者の愛猫チビに対してのやさしいまなざしに心をうたれました。
猫は家を選んで来ると言いますが、今身近にいる猫はひょっとしたら前世に関係のあった猫なのかもしれない。そんなことも頭に残りました。

佐藤春夫(1892-1964)
詩人・小説家。和歌山県生れ。慶大中退。与謝野寛・永井荷風に師事、「殉情詩集」など古典的な格調の抒情詩で知られたが、のち小説に転じ、幻想的・耽美的な作風を開いた。小説「田園の憂鬱」「都会の憂鬱」など。
*出典:広辞苑第三版

今回は、内田百閒、谷崎潤一郎、太宰治、佐藤春夫さんの小説とエッセイをご紹介しました。いずれの作品も猫に対しての愛情があふれたものでした。感情表現も豊かで“教科書に載せてもらいたい”と思いました。
この本には総勢15人の文豪が猫にまつわる短篇小説とエッセイが収録されています。猫に対しての視線も色々です。
猫好きならば、文豪が一気に身近になること間違えありません。
機会がありましたら是非読んでみてください。

*短篇に対しての感想なので舌足らずな点はご理解ください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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