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「螢」村上春樹著-に出てくる言葉から思いだしたこと

この小説「螢」に出てくる言葉から思いだしたことを書いてみました

この小説に出てくる時代の言葉は、自分に色々な記憶をよみがえらせてくれました。 下記にあげた言葉です。よかったら読んでみてください。(右にかっこで書いたのは自分の経験・記憶です)

学生寮(先輩後輩の関係は厳しくありました。先輩から呼ばれると飛んで行ったものでした)
ラジオのディスクジョッキー(アナウンサーが話しながら、自分でお薦めのレコードをかけるというスタイルがカッコ良かった)
入寮案内のパンフレット(いつからでしょうか、HPを見てくださいという案内になりました)
ソニーのポータブル・テープレコーダー(音楽を録音している途中でテープが終わってしまってリバースし落ち込むことがありました)
トランジスタラジオ(トランジスタ以前は真空管ラジオもあり組み立てた記憶があり、通信教育だったかな)
電気ポット
プレイボーイのピンナップ(壁に貼るのが男子の定番でした。今貼っていると問題?)
芝居(「しばいしてる」という響きが、都会に夢をもって出てきた若者を連想しました)
共同生活(寮以外にも一般宅の2階を数部屋に仕切って炊事場洗濯場トイレを共同にしているアパートもありました、今でいうシェアハウスですかね。ただ自分の知っている共同アパートの各部屋にはカギはありませんでした)
トレーナー(これはスポーツ関係者ではなくて、昭和の若者のファッションで便利な衣服でした。毎日着ていてもおかしくはなかった)
レコード(小説に登場しているのはアルバムレコードと推測しました。アルバムのカバーは厚紙製で硬いので、彼女の涙が落ちてから流れる。シングルレコードはその表紙(歌手の写真/裏が歌詞)が薄いので涙は落ちて留まってしまい流れないからです)
ボストンバック(言わずと知れたこの名前、横にBOSTONと書かれたバックは持ってる学生が多かった)

自分の大学時代はこの小説よりも十数年後ですが、上記にあげた言葉は現役でした。今となっては時代を表す言葉になっていました。なつかしい文字が並びました。

この言葉の中で特に「電気ポット」からは色々思いだしました。
自分が学生寮に入った時に持っていったからです。小説内の6畳を縦に伸ばしたような形の「寮の二人部屋の記述」には驚きました。自分が大学時代に入っていた学生寮に似ていたからです。場所は文京区でもないし右翼っぽい団体が経営してもいないが、ベットが2段ベットでないこと以外はそっくりです。

入寮時に買った「電気ポット」ですが、それはまわりは銀色で頭(キャップ)が黒くて、後ろの電気コードがやたら外れて困ったことや、面倒なので中に紅茶パックを入れて使っていたので、中に色や匂いが残ってしまったこと、音がおかしいと思ったら空焚きしていたことなど色々記憶がよみがえってきた。
賄い付きの寮だったので自分で調理をすることは皆無で、ポットは飲食で言えば唯一の「男子学生の生活必需品」だったのです。その後付き合いは長かった。

またスチール本棚も印象深い。入寮時に玄関奥のエントランスで展示即売していたので机と一緒に安く購入したのでした。ベット頭のすぐ横に設置したので、大きめの地震があると本や載せていたものが見事にベットの頭当たりに落ちてくることがあった。それを「笑い話」にしていたのだから平和と言えば平和だった。

テレビは共同で観ていたので、寮を入り口を入ると左に8畳ほどの洋室がありそこがテレビ視聴場所だった。長細いその部屋は中央にテーブルが一つ、両側の壁に沿ってソファーが二つ置いてあり奥の窓際にはブラウン管テレビが鎮座していた、チャンネル(回すタイプ)は先輩が占有していたので、我々新入りは入り口のところで遠目にテレビのプロ野球中継(ほとんど巨人戦)をみることが多かった。
その入り口の右側に小さな電話台があって、電話がくる時はそれとなく待っていたものだ。(当然携帯電話は持っていません)自分の場合は彼女はいなかったのでソワソワして待つことはなかったのですが。

都会での一人暮らしの寂しさ

田舎から学生寮に引っ越した時の寂しさはいまだに忘れません。初めての一人暮らしの開放感は後からできてくるものです。しばらくは知らない人たちばかりの間で必死に生きるというのがホントのとこでしょう。
「螢」の僕と彼女も田舎から出てきて淋しい中、中央線の電車の中で再会します。東京という都会にいて、電車で知り合いにあうことはうれしいものです。それが同級生だったら運命的なものです。しかし蛍の主人公たちは逆に重たい過去を思い出すことになってしまいます。

自分も大学は中央線沿いでした。4年間のうち電車の中で田舎の「知り合い」にあうことはありませんでした。田舎のローカル電車じゃないので当たり前ですが。

この「螢」は表現やディテールがすばらしいです。
自分と同世代の人はその時代を感じるのではないかと思いました。また若い方はスマホもないこの時代の「少し不自由な青春」を読み取ってみてはどうでしょうか。ぜひこの小説を読んでその世界を垣間見てください。

螢・納屋を焼く・その他の短編 新潮文庫より
*言葉を抜き出して参考にしました。

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