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ルーズヴェルトゲーム 池井戸潤著 レビュー

ルーズヴェルトゲーム 池井戸潤 著
レビューを書きました。

 

舞台は青島製作所とその野球部です。
社会人野球を愛する人たちと会社の経営幹部が、会社の経営危機のなか、迫りくる様々な困難や障害にぶち当たり、時には立ち止まり、悩み、苦しみながら日々を一所懸命に生きる姿を丁寧に描いています。

この小説は初版が2012年ですので、その時代は2009年にリーマンショックがあり世界的に経済が停滞していた時期でした。

登場人物は青島製作所の創業者で会長の青島毅、社長の細川充、専務の笹井小太郎、役員部長社員たくさん、野球部関係者として部長の三上文夫、マネージャー古賀哲、新監督の大道、野球部のメンバー(ベテランから新人、有名校出身者から無名の選手、契約社員から派遣社員まで)です。個性豊かに小説に登場します。企業人と野球人の姿をしっかりと書き分けているのは凄いと思いました。

もちろん池井戸作品ですので強力なライバル会社ミツワ電器も活発にからんできます。当然厳しい競争が待っています。
会社の経営の舵取りは、野球部の存続にも影響をあたえつつ、ドラマは大きく動いていきます。そして株式総会まで持ち込まれることに。

アマチュア野球の内情もしっかりと書かれていて興味深いです。相当研究されたのでしょうね。野球のゲームはもちろん勝負がすべてではあるのですが、その裏には人間ドラマがあるなあと思いました。社会人野球を見る目が変わりますね。

*自分の感想は下に書いてあります。小説読んだ直後なので少し熱量が上がっています。その辺りは割り引いてください。

悲しいかな組織の中にいる人は、どうしようもない運命を前にすることがある。いちサラリーマンはその流れを変えることは出来ない。しばらくは自分の無力さに打ちひひがれる。しかし大切なことを見つけた、大切な人が出来たとき、自分で出来るかどうかわからないけれども、自分にうそをつけないことを見つけたとき、行動が始まる。成し遂げようとする思いは仲間を呼び、組織を変える大きな力になる。

自分も少年の時野球をしていて、皆がまとまって強い相手に立ち向かっていって、勝ったときの喜びはこの上ないすばらしいものでした。弱くても勝てる、勝負は100%決まっている訳ではない、勇気をだせ、あきらめてはいけない、と思う。

小説の最後のゲームが終わった瞬間に、自分も球場の観覧席の一番上段の席で試合を観戦していたかのような錯覚に陥った。皆よくがんばったと言いたい。

プロローグを残すところで、間をおきたくなった。読み終えたくないのと、どうなるのか不安と両方です。物語がホントに熱かったからとも言える。

野球で始まり野球で締めてはいて野球選手としての激しいドラマがあり、野球に対するやさしいまなざしが感じられる。そしてサラリーマンのドラマ構成がよく出来ている。
現代の企業人のドラマを書かせると池井戸さんと並ぶ人はいないといわれるのも納得です。
野球を知らなくても人間ドラマが面白い。もちろん野球を知っていればもっと熱い。おすすめの一冊です。

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