「陸王」池井戸潤著-レビュー-生死を賭けた中小の物語

「営業」にみる-リアルを描くテクニックが凄い

「新商品の売り込みの文章について」の進行。

小説を120Pまで読み進めた段階で、非常に筆者のテクニックに感動し内容に共感した部分があったのでご紹介します。

料理に例えれば有る程度の素材しか出ていないのに何でこんな味が出るの、という感動を覚えたからだ。

小説の進行にかかわっていることで、「起承転結」で読者を話に引き込むテクニックを利用している。これで「人間の感情」や「商売のおもしろさ」を表現している。

それは新製品の陸王を販売しようとして「いろいろ営業を掛ける」くだりで、一番目は銀行の営業マンが紹介してくれた企業陸上部の選手に対する営業、二番目はショップの店員さんからの紹介で動く営業、三番目は営業をかけるのではなく相手から電話が掛かってくるお客様と言うものだ。

最初苦労して開発しても、一番目の陸上部の選手に対して新しい商品を売り込む営業は大変だな、という出だしから、二番目のショップの紹介で、ひょっとしていけるかなという軽い期待に変わるも受注できずガッカリ、奈落の底へ落とされる。しかし三番目の意外な方向から問い合わせがあって受注する。

*営業を女の子に対するプロポーズと例えてみれば、一番目は高嶺の花、二番目は手の届くレベルの花、三番目は予測しない相手からのアプローチ、こんな感じでしょうか。
恋愛は商売ではないのでちょっと違いますが。

話の展開の仕方が「さすが!」です。

シューズの売り込みの過程で「思わぬおもしろさ」に当たったので書きました。

*自分も営業時代に経験したことがあるのですが、最初から見込み客を絞り込んでも受注できるとは限らないんですよね。自分の目線を限定し可能性を狭くする可能性もあるんです。
一生懸命営業をかけて実らなかった事例が、別のお客様の受注をする時に役だったり、意外な所から注文が有ったりして、商売は面白いものです。
池井戸さんも同様の経験があったのでしょうか。

*最後までお読みいただきありがとうございました。