「エッセイ脳」岸本葉子著 中央公論新社刊を読んだ感想になります。
*若干のネタバレあります。ご注意ください。
【エッセー】
*広辞苑第六版より
①随筆。自由な形式で書かれた個性的色彩の濃い散文。
②試論・小論。
「エッセイ脳」に書かれている、岸本さんのエッセイとは?
・長さが800字から1600字までのもの。
エッセイの基本要件は、「自分の書きたいこと」を「他者が読みやすくなるように」書くこと。
目次を簡単にご紹介
目次を見ていくと、第一章から第四章までの項目が具体的に書かれています。
(個人的な解釈をつけ加えています)
第一章「テーマは連想の始動装置」では、エッセイのテーマの作り方、話のすすめかたを書いている。
第二章「頭にはたらきかける文、感覚にはたらきかける文」では、文章の組み立て方など、エッセイを書くポイントを書いている。
第三章「リスク回避と情報開示」では、読み手のことを考えて、書くために必要な技術を書いている。
第四章「文を制御するマインド」では、語感・常套句・比喩など、より深いテクニックを書いている。
(作家として生きていくためのアドバイス?)
この本は基本的にご自身の経験をもとにして書いています。
一般的な技術を系統立ててまとめたマニュアル書とは少し違います。
自身の書かれたエッセイを例としてあげて解説してくれているので頭に入ってきます。
エッセイを書こうとしている人や現在文章を書いている人に取って、とても参考になると思いました。
エッセイとはどういうものかを細かく、具体的に知ることが出来ました。
役立てたい技術、三点を取り上げてみました。
【一番目は、起承転結にこだわらないという点です】
「ある、ある、へえーっ、そうなんだ」を目指す。
転を書きたいことの中心にする、転から組み立てる、という部分です。
(自分は書きたい・伝えたいことを中心にして組み立てると解釈しました)
【二番目は、エッセイを成り立たせている文章を3種類に分けて捉える部分です】
その三つの文とは、①枠組みの文、②描写の文、③セリフです。
書くときにこの三点を意識して書いているとのこと。
・「枠」とは読者に対して今の状況を説明する文書のこと。
ある意味、読み手に思い込みを作ってもらうこと。
別の話に切り替えるときに使える。
・「描写」とは、五感を使って受け取ったものを細かに書く事。
(ディテールのようなもの?)
*描写は想像を喚起する一方、独善的になりがち。
読み手に引かれる、読み手が離れてしまう原因にもなりうるので注意。
間に“枠組みの文”を差し込んで、これはこういうことなんですと改めて説明(補完)することも必要。
・「セリフ」とは、描写の補強。
セリフとは描写につかれた人に一息ついてもらうアイテム。
(描写を読むよりもセリフで書かれた方が読み手は楽)
書き手はセリフに頼り、説明しすぎない。
セリフは説得力をつける。(なくても伝わるが、あるとリアルになる)
枠組み、描写、セリフを効果的に組み合わせる。上手に使うことでエッセイがおもしろくなる。
*自分としては「枠」を意識して使いたいと思いました。
エッセイは何の話をしているのかを意識してもらうことが必要。
書く方にとっては、文章がばらついてテーマからそれるのを修正できる。
【三番目は、文末「です、ます」、「だ、である」の混用に注意しているという点です】
この文末(常体・敬体)は、導入、注意をひきつける効果がある一方、読み手が緊張し通しになることもある。弛緩するところを設けることが大切。
注意しなければいけないのは、常体と敬体の間に断絶がなく、読み手が常体と敬体との間をスムーズに行き来できるようにすること。
*常体:「である体」に同じ。敬体:「です体」に同じ。*広辞苑第六版より
他にもエッセイを書くための沢山のテクニックが書かれていました。
細かな作業の積み重ねが大切なのだと再確認しました。
感想
エッセイの書き方を難しく書いていないのが良いと思いました。
岸本さんが自分のエッセイを題材として分析しているので読み手に伝わる。
エッセイで生きてきた岸本さんの語り口は、とても丁寧ですがポイントは外さない。
エッセイはどのようなものかを知ることができました。
テーマを生かすには自分の情報収集力(アンテナ)が大事であること。
“その感性を大切にすること”が、エッセイに大事な命を吹き込むのだと思いました。
エッセイの醍醐味は、自分の言いたいことをさりげなく入れられること。
上手に伝えることが出来たら素敵です。
そのために“論理的に考えて文章を書く能力”が必要なんですね。
自分はエッセイを意識して書いたことはありません。これから挑戦したいです。
京都造形芸術大学通信教育部での授業にも使われた内容であるということ、とても具体的なのも納得です。理解が難しい点もありましたが、今後書いていきながら学びたいと思いました。
読む価値がある本です。興味のある方は是非読んでみてください。
*「エッセイ脳」岸本葉子著 中央公論新社刊を読んだ感想でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。