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おかあさーん!-あったかくなんかない-ともちゃんの幸せ-デッドエンドの思い出-感想2


よしもとばなな著「デッドエンドの思い出」文藝春秋刊 より
「おかあ~さん」、あったかくなんかない、ともちゃんの幸せ の感想になります。*本を読んでから感想を読むことをお勧めします。







「おかあさーん!」感想




出版社に勤めるOL「松岡さん」が社員食堂で昼食を食べることで、彼女の身の上に降りかかった突然の災難。次第に会社の人たちや恋人「ゆうちゃん」から自分の置かれている状況がわかってくる。そして彼女は自分の家族や自分のことに向き合うことになった。




主人公が体験した「突然の災難」、その事件に対しての普通のOLの反応から始まる物語。しかしその反応も機敏ではなく、次第に分かってくるもの。
体にも影響が出てくる、他の人にも色々と教えられる、そして彼女自身もその重さに気が付いてくる。この辺の主人公の普通さや、少しの現実感の欠如、意識のズレがきめ細やかに書かれている。そしてこのような「主人公の意識の変化」こそが、この物語の土台にある。
自分を振り返り“気づくこと”で様々な感情も加わっていて、目が離せないドラマになっている。

主人公は事件後に体の不調から始まり、会社の同僚や先輩・上司、恋人との対話、家族(育ててくれた)との関係、そして母との関係や思い出にも想いが及んでいく。それは彼女にとっては今までない感情であり、その忌まわしい事件がなければ到達できなかったものなのかもしれない。




近年不気味な事件が増えていて、一層「先の読めない世界」になっている。会社が放火された事件なども記憶に新しい。ある意味普通に暮らしている人間にとって、現実感のないものでもある。それは「自分は平和であること」の裏返しで仕方のないことなのかもしれない。




しかし一度身に降りかかればこの主人公のように自分の生死に関わることにもなりかねない。その時「自分がどう生きてきたか」「人生にどう向き合ってきたか」が目の前に現れる。
「自分が家族との関係をどこまで真剣に考えていたのか」「母との関係」など、この小説はさらに彼女の心の奥底まで描いています。今まで見ないで済ませていたことに対して、自分の気持ちと向き合うことになる。
*決して主人公の彼女だけの話ではありませんでした。自分も深く考えました。




普通のOL、女子の感性が良く捉えられていると思いました。




自分はこの社会にどうかかわっているのか、周りの人との関係、恋人との関係、家族との関係から始まって、最後は「自分ってどういう人なのか」「幸せって何だろう」そんな様々なことが心に残りました。




「あったかくなんかない」感想




主人公「みつよ」は書店の長女で小説家。彼女が小さいころ、近所の大邸宅に住む男の子「まことくん」との思い出を書いている。彼は優しい性格だったが、家族には複雑な事情を持っていた‥。




語られているのは男友達「まことくん」との思い出であり悲しい別れ。
テーマは結構重たい言葉で、小説の最初に語られている。
それは「川の恐ろしさ」と「明かり」だという。二つが小説にどう編まれていくのかに興味がわいた。
筆者が昔を語っているので、子供時代の気持ちと現在の気持ちが交錯していく。子供時代の気持ちを書くことは難しいのだろう、お互いの家に関しての話が起点になっている。幼いので自分の家を中心にして世界も狭い。隣同士でお互いの家庭を比較している。遊びに行って親しくなっているのでなおさらだ。
*自分を振り返っても、隣に住んでいたおばあちゃんの家に入り浸って遅くなり「早く帰ってこい」と親に言われたことを思いだした。




小さい子供たちにとっては友達の家は「初めての外世界」であり、自分の家と比較するのは、「自分の家はこれがいいとか悪いとか」いう社会性が生まれる最初の過程かもしれない。大家族に対してのあこがれだったり、自分の家と比較して家族の少なさに不安になるなどである。




同年齢の子供でも、女子と男子では意識の発達に差が出ている。「家に対しての捉え方」が微妙に違う。男の子はうまく自分の家のことが上手に語れないし状況もつかめていない。一方筆者は女性なので、「家族についての役割」とか「家族の持つ明かり」についての意識がある。
その違いこそがこの小説への興味を生んでいる。それは男の子は子供のままで、考えるはずのないことは伏せられているからである。主人公の「幼いままの彼に対して思い」が小説を深くしている。
*この所がこの小説の読みどころなのだと思う。




特に川を時の流れに置き換えているなどから、人の営みは時の流れに逆らうことは出来ない、全てを飲み込むしかない。
幼い時の思い出に今の想いが重なって語られている。主人公は彼との思い出について振り返って分かったことがあった。




そこには川があって時を進めていること、「はかりしれない恐ろしさ」を持っている事。その川を渡っている船は家族であり「明かり」がある。その中には「暖かな光」も「そうでない明かり」もある。
その川の中で光が蛍のように浮かんで消えていく。そんなイメージが残りました。




最後どうしても「生命のはかなさ」を思わずにはいられなかった。




「ともちゃんの幸せ」感想




ともちゃん小さなデザイン会社に勤めているOLさん。自分の16歳のころの思い出や家族の話を語っている。ともちゃんにとってあまりいい記憶ではない。そして5年前待っていたことが現実になろうとしていた。それは三沢さんという会社の同僚で、ともちゃんはその人を好きになった‥。




ともちゃんはあまり気にしていないが、小説から感じられたのは、ともちゃんの生きてきた過去は、普通より幸せが薄いことです。彼女はOLになり三沢さんを好きになった。そして自分の素直な気持ちを取り戻した。その時に彼女が心に沈めていた感情に向き合った‥。




結末は書かれていませんが、彼女が初めて恋をしたのであれば良かったと思いました。




*最後まで読んでいただきありがとうございました。