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デッドエンドの思い出-よしもとばなな著-感想1-幽霊の家-デッドエンドの思い出


よしもとばななさんの小説を初めて読みました。
短篇小説の本として有名な「デッドエンドの思い出」です。私小説のような書き方で登場人物も本人の話でもあるような、でも実際はどうなんだろうとか、色々と考えながら読み進めると“ただの私小説ではない”という事に気が付く。
小説の合間に入る一見何か関係のないような文章が伏線になっていたり、何かを暗示しているようでもあり、少し村上春樹さんのに小説にも似ている“透明な世界”であったり“奥深さ”も感じました。
主人公のドラマもさることながら、 文章が全体的に優しく感じられる語り口に思わず引き込まれてしまいました。また男として女性の目線にも興味を惹かれました。
感想には一部ネタバレが含まれます。先に本「デッドエンドの思い出」を読むことをおすすめします。読んだあと自分の思いと比較したりして、意見の違いをあれこれ考えるのも楽しいと思います。
*感想はあくまで個人的な意見です。




「デッドエンドの思い出」よしもとばなな著-文藝春秋刊より
「幽霊の家」「デッドエンドの思い出」2作品の感想になります。







「幽霊の家」感想




大学生男女の物語。主人公の女子「せっちゃん」が大学で知り合った「岩倉君」。おたがいに客商売の家で育ったという共通点もあり友達になった。彼女は岩倉君のアパートに行く関係になる。アパートには老夫婦の幽霊が出るという。岩倉君はフランスのお菓子の学校に入るため留学することを決意する‥。




2人とも親は地元の町の自営業者であり、共通点がお互いを惹きつけていくのも自然です。お互いを知ることですぐに意識する関係になるわけでもなく、お互いの夢には干渉できない。これはとても若い二人にとっては自然なこと。色々ありますが次第に“相性の良さ”を知っていきます。
そこに出る幽霊はまだ違和感でしかないが、後のドラマには重要な憧憬になっている。「幽霊」は二人が意識するきっかけを作ったエピソードである。




その小説内に登場する「老夫婦の幽霊」とは、小説には書かれていませんが過去の“若い恋人達”を連想するものであり、そこから続いている“老夫婦の姿”は変わらない愛を描いているのだと思いました。幽霊は時を超える存在であり「永遠」を意味しているのではないでしょうか。
彼ら若い2人の人生にはこの後多くのドラマがあるでしょう。忙しい中で記憶も流されて忘れていくはずです。
しかしこの不思議な「夫婦の幽霊」は記憶に残るような気がします。その理由は幸せであれば忘れがちな記憶の中で、ある意味「記憶のしおり」のようなものになっていると思うからです。そして二人の関係がピンチの時には、それが会話の「きっかけ」になる。幽霊の話題を思いだして笑顔になれたら素敵だと思いました。




大きなドラマがなくても、与えられた運命の中で生きて『愛をはぐぐむことの幸せ』をみました。そのテーマを書いている作者の文章力は素晴らしいと思います。「幽霊の家」が永遠に続く幸せを表現しているとしたら、2人の将来は必ず明るいものになる。決して忌み嫌うものでなくて吉兆となっていくのでしょう。




20代の男女の考え方や性の違いとか、成長していく過程も見事に書かれています。私も2人を祝福したいと思いました。




「デッドエンドの思い出」感想




登場人物は主人公の女子「ミミ」、幼馴なじみ30歳位の「西山君」、ミミの婚約者「高梨君」の3人。主人公と彼ら男子2人とのドラマが中心。ミミの彼らに対する思いで話が進んでいきます。




主人公ミミの気持ちや性格がよく書かれています。少しおっとりな性格そのものです。周りの人たちも表情豊かで暖かい人たちばかりで話に暗さはありません。
しかし主人公の女性としてはとても“深刻な失恋”の話。20代の女性にとっての“デットエンド”クラスの大事件です。物語の最後その大事件が深刻な“結末”にはなりません。
理由は幼馴染の男子をはじめ主人公の周りにいる人たちが支えているからであり、彼女自身が、悪い事が起きても「常に自分だけが不幸ではない」「話を聞いてくれる人のことも考える」「家族に心配かけたくない」など周りを見ながら行動しているからです。しかしミミには消極さも見え隠れする。
彼女の性格もとてもおっとりしていて、少し気が付くのも遅い、あまり勘の良くない人で、それは本人も自覚している。
そんな“おっとりしている彼女が失恋(大事件)を経験する中での「幸せになるための気づき」。それが小説でのテーマなのかなと思いました。




この小説の中でも主人公が周りの人の気遣い(愛)を知り手に入れた宝物。「自分一人で生きているわけではない。」「周りの人も悩んでいる。」「悩みながらも自分を諦めない。」という『気づき』です。
そして“悩みや問題を抱える若い女性”に対して、周りの人に頼ったり相談してみること。周りの人との関係を大切にしてほしいこと。もっと前向きに・積極的になることの大切さを。
また“平凡な生活を送っている人たち”に向けても、この「緩やかなきずな」それこそが得難いことであること、「幸せとは身近にある」その小さいけれど確かな幸せに気が付いてほしいと言っているように思いました。




主人公ミミと周りを包む人の「つながり」に心が暖かくなりました。




*言葉選びにも小説の繊細さを見つけた。
それは男女のドラマに特有の言葉「愛」とか「恋」とかがほとんど出てこないこと。その二つの言葉を安易に使うよりも、ていねいに言葉を選んで物語をすすめた方が、“小説の世界観”には合っているのだと思いました。