*映画「五十年目の俺たちの旅」を観た感想です。
2026年1月に千葉県旭市「サンモールシネマ」での、上映会+中村雅俊監督トークショーに行ってきました。
*長いので時間が許すときに読んでいただけると嬉しいです。(若干のネタバレあります)
TVシリーズ「俺たちの旅」とは?
最初のTVシリーズが描いていたのは、修学院大学の学生でバスケットボール部に所属するカースケとオメダ、マネージャーの洋子。そこにカースケの小学校の先輩で社会に出ていたグズ六が現れる。グズ六は紀子さんと結婚まじか、二人は紀子さん宅の離れで共同生活をすることになり‥。
東京の井之頭公園周辺で、彼ら若者3人が織りなす友情と青春の物語。カースケは自由奔放で熱い男、洋子はカースケに好意を持つ。オメダは洋子が好きらしい。カースケとグズ六は女好きで、オメダは失敗ばかりで問題を起こす。生きていくことの意味、友情や恋愛の悩みを問いかける。
*三人のキャスティングが素晴らしく息がぴったり。
脚本:鎌田敏夫さん・演出:斎藤光正監督の技術もあり面白くて切ない物語。
50年たっても青春ドラマの金字塔と言われる。
*シリーズ終了後10年ごとに、「10年目の俺たちの旅」、「20年目の俺たちの旅」、「30年目の俺たちの旅」の3作品が作られた。劇場版は今回が最初。
「50年目の俺たちの旅」STORY

津村浩介“カースケ”(中村雅俊)と、大学時代の同級生の神崎隆夫“オメダ”(田中健)、カースケの小学校の先輩である熊沢伸六“グズ六” (秋野太作)の3人は70代になり、付き合いはすでに 50年を過ぎている。
カースケは現在、従業員10人ほどの小さな町工場を経営し、オメダは現在も鳥取県の米子市長を務め、グズ六は妻のおかげで介護施設の理事長の座に収まり、それぞれ平穏な日々を過ごしていた。そんなある日、カースケの工場にオメダがやってくる。カースケは、米子市長を務めるオメダを誇らしい気持ちで従業員に紹介するが、オメダは思いつめた様子ですぐにその場を後にしてしまう。
また別の日、カースケの工場で制作中だったポットが大量に割られる事件が起きる。その中に懐かしい砂時計を発見したカースケ。その砂時計はかつての恋人・洋子と行った思い出の地、鳥取砂丘で買ったものだった。20年前に病死した洋子を懐かしむカースケだが、グズ六から「洋子が生きてる!」と驚きの情報を耳にし・・・。
出演:中村雅俊 秋野太作 田中健/前田亜季 水谷果穂 左時枝 福士誠治/岡田奈々原作・脚本:鎌田敏夫 監督:中村雅俊
映画パンフレットより引用
様々な変化があるけれど、変わらないものもある。

冒頭のシーンで「アレッ」って思われる方もいらっしゃるかと思います。
確かにドキッとするシーン。
上映前の挨拶で中村雅俊監督が登壇した際に、意外な始まり方で国宝っぽい?と語っていました。
確かに謎めいた始まり方に驚いた。
(ネタバレになるので詳しくは言いませんが。)
頭の中に混乱ありつつも、数十年を経た主人公3人が登場して、現在の生き様が明らかになる。
洋子が生きているという連絡を受け、カースケは動き出す。
オメダの問題もはらんで、“過去の物語と現在がリンク”して動きだすと、俺たちの旅が始まります。
序盤から中盤になり状況が見えてきて、物語は次第に落ち着いていく。
カースケが次第に熱く自分の意見を語り始めるあたりから、ラストまでの展開が見どころです。三人の関係を描きながら、年齢的には人生の終盤、仕事の立場も色々であり責任あるカースケや割と気楽なグズ六、またオメダは今までの人生を振り返る。
さすがに女関連の問題は無くなってきたが、身内の不幸や実家の問題、妻や子供達との関係にも変化があり自分の生き方を振り返る。
三者三様の“人生終盤の男の描き方”がよく出ていた。
中村監督がいうように、年取った男ばかりだけど、五十年目の俺たちの旅の世界観「生きることの切なさ」を表現していた。
初めて観た人には、おそらく分かりにくい部分があると思う。この映画だけですべてを繋げるのは厳しい。
(*後半でその理由について書いています。)
中村監督が最初に言っていたけど、洋子への郷愁やそこに関係するオメダの妹真弓の数十年の隙間を埋める作業は観る側として必要です。
ただ俺たちの旅の話がある程度理解できる人であれば、楽しめるはず。
三人のキャラクターは変わっていないから。

オメダの弱さは生まれもった性格であり、人間とは不完全なもの。
青春から離れて振り返る年齢になると、割り切らないといけない事も多いけれど、やっぱり俺は俺と言いたい時もある。
年齢を重ねても“自分に対しての素直さは大切だ”と語っている。いい歳のくせに何やってるのか?と思われてもいい。世の中の常識にとらわれないというのとも違う。
カースケの言葉でいうと、“不器用だけれど俺は俺の生き方しかできない”。人間は未完成であっても良き仲間がいればいい、と言っている様にも思った。
感想
真弓役の岡田奈々さんの演技が見どころ、キーになる役なのでさぞかし悩まれたのだろうなと推測した。岡田さん熱演でした。
また田中健さんのオメダは、繊細だけれど自分らしく生きる、男子のかわれない姿を演じていた。
グズ六は奥さんの紀子さんの傘の下にいて、しっかり生きているのも楽しい。秋野太作さんが年寄りの軽さをコミカルに表現している。
主演の中村雅俊さんは自分の演技が甘くなったと言っていたが、初めての監督作品での主演という難しさは、表情の作り込みに出ていたように思った。それでも重要なシーンではカースケらしさを表現出来ていた。物語を締める役割は果たしていたと思う。
そして原作家・鎌田敏夫さんの脚本の良さがある。
TVシリーズから関わり、10年目、20年目、30年目、そして50年目と、俺たちの旅の世界観を崩していないのは凄いと思います。
それでも三人が元気にスクリーンに出て演技をすること自体が奇跡に近い。
最後は映画が終わらないで欲しいと願っていた。
五十年目であり、五十年後といわなかったのも意味がある。
カースケ・オメダ・グズ六、いまだ通過点なのでしょう。
*オメダの娘、神崎真理役の前田亜季さんが上手でした。

旭市の飯岡海岸や風景のきれいなところが映っていました。
又、旭中央病院が重要な場面で使われている、これは少し驚きでした。
海岸沿いのハンバーガーカフェ「no Wave」からの景色も良かった。
この日はオーナー夫妻が上映会に来ていました。
今度ハンバーガーとコーヒーいただきながら、ロケの話とか聞いてみたいです。(なんでも中村雅俊監督がギターで生歌を歌ったとか?、監督は覚えていないようでしたが本当でしょうか?)
※中村雅俊監督は冒頭のあいさつで、今回の撮影に対して「あさひロケーションサービス協議会」の協力に感謝を述べていました。
*ここからは、俺たちの旅ファンの方へ作品を考察して書いてみました。良かったら読んでみてください。(結構ディープな話です)
「50年目の俺たちの旅」は「10年目の俺たちの旅」の答え合わせ
かなり構成が計算されていました、演出も工夫されていました。
中村雅俊監督から「撮影前にたくさん準備作業が必要だった」と聞きました。50年目という長い年月を経て、同じ登場人物で描くことの難しさが有ったものと想像しました。
人間は変わっていく、世の中も様変わりし、価値感さえも変化する。今回の映画化の難しさは、本来のTVシリーズが持つテーマを今の時代にどう置き換えるかだと思っていましたが、杞憂でした。
10年目の俺たちの旅、20年目、30年目と物語のテーマは続いていた。後はどう着地するかだけ。以前の物語から採用する部分と、カットする部分のメリハリが大事だったのでしょう。
見終わって登場人物に感情移入していました、感動できました。
その理由は“変えないことと変えることがはっきりと見えていた”からだと思います。
変えないこと、「俺たちの旅」らしさ
・カースケ、オメダ、グズ六の性格。
・俺旅の男女の恋愛には切なさがある。
・三人の絆(友情)は変わらない。
*オメダが問題をおこして2人が助ける物語。
変えたこと、見た目と語る言葉
・オメダは長年の職責を果たし疲れている。相変わらず脆さを持っている。
・カースケは経営者で勝手な物言いはできない。従業員への責任もあり苦労も増えた。(俺中心の生き方から変わってきた)
・グズ六は年齢を経て動きがぎこちないが言うことはまとも。紀子さんの傘の下での余生。
物語を振り返りやすい構成、場面をシンクロさせる
10年目の俺たちの旅から50年目へつながる物語。
物語の空白を埋める、観る人の立場に立ち記憶をつなげる為のカット割りがありました。
過去と現在とをシーンで繋いでいました。
10年目の~と50年目の~でシンクロしていたのは、以下のシーンです。
・オメダが理由も語らず失踪する。(10年目と50年目)
・カースケとグズ六がオメダを探しに行く。(10年目と50年目)
・海岸の砂浜をカースケと真弓が歩くシーン(10年目)
・海岸の砂浜でオメダと真弓が歩くレシーン (50年目)
(*砂浜には流木がありました)
・オメダがカースケとグス六に両腕をつかまれて歩くシーン、3人の顔には笑顔があり。(10年目と50年目)
※砂時計からカースケが洋子と行った鳥取砂丘の旅も回想シーンとして使われていました。他にも有るはずです。
「10年目の俺たちの旅」のシーンに似せた「50年目の~」の場面を分析すると編集が上手だったので、観る人を過去に戻し、感情を揺さぶる効果があった。
50年目の俺たちの旅は、10年目の俺たちの旅があっての物語であり、登場人物の人生は続いていた。中村雅俊監督が準備に時間をかけたというのも納得。だから映画の完成度も上がったんですね。
答え合わせが、感動に変わる
【感動を呼んだこと】
「10年目の俺たちの旅」と「50年目の俺たちの旅」の共通点と相違点から。
・自然豊かな隠岐(島根県)、米子市(鳥取県)が主な舞台。海と港が郷愁を呼ぶ。
「10年目の俺たちの旅」でも事件があった場所である。隠岐がでることで、観る人が40年前まで戻れる。旅情ある場所、海、風が厳しくも優しく迎えてくれる。海は人の心を癒す力がある。
・米子は過去に縁のある場所だが、知らなかった過去を知る。
主人公3人と、洋子、真弓、皆が10年目に集まった場所でもある。
洋子がいた場所でもあった?新たな過去を知ることで、どうしようもない喪失感が湧き上がる。洋子に対しての思いがフラッシュバックする。(記憶のかけらが切ない)
・成長して変わったことがある。変わらないことも見せる。
現在の3人のセリフがある、昔と違い女の話題だけではない。大人としてふさわしいことを語る。
しかし一方で、カースケ、オメダ、グス六は「10年目の俺たちの旅」と同じ行動とる。そこには3人が大事にしてきた「友情」がある。

・失ったものがある:時の流れを描く。
“真弓が変わっていたこと”で新たなドラマが生まれる。
真弓の行動が謎を生み3人をまとめる原動力となる。オメダの失踪を解決する鍵でもある。真弓は以前のように明るく活発ではない。
中谷兄妹は母を亡くし傷ついてた。主人公たちとオメダ真弓との間には溝が出来ていた。
・もう自分だけではない。
10年目~で生まれた新しい命の誕生から成長した若者の姿がありました。答え合わせをさりげなく描いています。若い人の姿には未来・希望がありました。
それでも三人の生き方は変わらない。時代が変わっても変えない友情がある。それこそが「俺たちの旅」なのでしょう。
俺旅のテーマ「恋愛が生む切なさ」とは?~「10年目の俺たちの旅」から見えたこと

カースケを思い続ける洋子の人気は高いそうです。
カースケの女たらしではっきりしない姿に対して、恋に真剣でまじめな洋子に共感する人が多いということでしょう。今回の50年目の俺たちの旅では、その洋子が20年前に亡くなっていて振り返り以外では出てきません、とても残念です。
なのでカースケとオメダ、洋子との三角関係について書いておかないといけないと思いました。自由奔放で熱く浮気な男性、いい人だけど頼りない男性、一人の男を愛する内気な女性の微妙な恋の三角関係です。
俺たちの旅は青春群像の金字塔といわれます。男の友情が目立ちますが、恋愛もの(純愛・三角関係)としても素晴らしい作品でした。
50年目の俺たちの旅の起点となる「10年目の俺たちの旅」を見直して思ったのですが、この物語では“主人公カースケの悩み”が際立っていることです。
・カースケは10年の時が流れ再会した二人の現実を目にします。
オメダはすでに結婚し人生に悩んでいる。(自分は結婚せず自由にやっているのに。)
又、洋子も同様に結婚して夫を支えている。洋子なりに過去と決別して前へ進もうとしている。
・カースケは昔の勝手な言動を振り返ります。
オメダは、洋子を忘れるために結婚を急いだのかもしれない。(カースケに対する劣等感もある)
洋子は自分のカースケに対する気持ちに整理もつけたかった。それであまり好きでもない相手と結婚することにしたのかもしれない。
カースケは洋子に自分の気持ちを伝えなかった事に後悔する。
・突然の展開に戸惑う。
オメダが洋子に電話をかけたことで皆が壱岐で顔を合わせることに。(オメダは洋子を忘れられないでいた?)
オメダも悩み、洋子も悩んでいた。結果カースケに再会することで心がゆれる。
カースケには不器用な男だけど実直で、魅力や強さを持っていました。
2人に影響を与えていたのは間違えないのです。
カースケは二人と再会します。自由奔放に生きていましたが、オメダと洋子、2人の悩みを見て自分の生き方を振り返る機会になる。
悩んでいる洋子に本当の気持ちを打ち明けるのです‥。
(空気が読めないカースケらしさもあります‥)
カースケは歳を重ねて、素直に気持ちを出すことが不得手であったことに気づいた、今からでも洋子に何かしてあげたいけれど無力だった。このあたりがとても切ないです。ともに不器用なところがある二人のすれ違いも切ないです。
*10年目の俺たちの旅は、カースケが立ち止まり成長をする物語でもありました。その40年後である50年目の俺たちの旅でカースケの気持ちがどう描かれているのかを観るのも面白いと思います。
まとめ
カースケだけをとってみても、俺たちの旅は人間の生き様を真っすぐに描いていることがわかる。だからTVシリーズから始まって10年目、20年目、30年目があり、50年目がある。
彼らが歩んできた「50年間の物語」がある。
人生は山もあるし谷もある、それでも人を愛し・人を信じ・人生を描き続ける。だから俺たちの旅は時代を超えて愛されているのだと思います。
*いうまでもないですが、小椋佳さんの挿入歌は最高です。
登場人物を優しくつつみ物語を盛り上げていました。
「俺たちの旅」「ただお前がいい」「めまい」。小椋さんの歌は切なく心をうちます。
※この記事は個人的な意見です。
「五十年目の俺たちの旅」パネル展を見て帰ります

今年は旭市合併20周年の年。節目に合わせて映画「50年目の俺たちの旅」とのコラボ企画、映画のパネル展がサンモール1Fで開催中です。
TVシリーズの懐かしい写真や今回の映画の撮影風景もあります。
なんでも遠方から見に来ている人もいるそう。
「俺たちの旭」まち巡りスタンプラリーの参加用紙をいただき、スタンプを押しました。
指定された4か所(サンモール・いいおか潮騒ホテル・道の駅季楽里あさひ・no Wave)を回り、スタンプラリーを完成させて、クリヤーファイルをいただけるよう頑張ります。
(期間あり:1月9日から2月6日まで、プレゼントは無くなり次第終了とのこと)
また長くなってしまいました、反省です。
それではまた。
※最後までお読みいただきありがとうございました。