竹久夢二-愛と哀しみの人生2-なぜ女性像が支持されたのか?

夢二の生きていた時代

明治維新以来の西欧風近代化の波によって自由がひろまる。
一方昭和軍国主義の台頭で暗さがある。時代は揺れ動くなか和洋折衷の文化が広がっていく。

【大正デモクラシー】

明治維新から始まった西欧風の来訪、産業近代化の波が打ち寄せる中、昭和に入ると軍国主義が忍び寄ってくる。
重たい時代、自由と暗さが交錯している時代。その間にしばらく咲いた花、それが大正デモクラシーだった。
大正時代に顕著になった民主主義(デモクラシー)的風潮のこと。
憲政擁護運動、普通選挙獲得運動、或いは吉野作造の民本主義や一連の自由主義・社会主義の思想の昂揚等があり、従来の諸制度・諸思想の改革が試みられた。

*出典:広辞苑第六版

浮世絵の形にモダンな雰囲気を加えた絵。

抒情と現実の間にたたずみ。
目が大きく主張する女性たち。
清純さもありながら退廃でもあるしなやかさ。
一歩さがる姿・物思いにふける姿に憂鬱さがかくれる。

夢二の描く女性たちは、美しいだけでなくどこか哀しみを感じさせる。
伝統を継承しつつも夢二ならではの感性を加えている。多彩な技術で。

大正時代の匂いをのこしている女性・作品たちは、現代の人々の心を捉えて離さない。

夢二にとって女性は芸術の原動力であり人生を豊かに力づける源泉だった。

内なる欲求を満たすために自分に嘘をつかない表現者
しかし理想を追い求めるがゆえに決して満たされることはなかった?。

三人の女性と夢二との関係を想像してみた

(他万喜) 生きるために苦楽を共にした逞しい女性、夢二の成功を支えた。
(彦乃)素性のいい若き美術学生、先生と生徒という禁断の恋だが。利害関係がない関係。
(お葉)若きモデルにして都合のいい関係。欲求と必然がもたらした。

一般的に男女の恋情は庶民が生活するうえでは隠されるべきもの。
しかし夢二の女性遍歴は違っていた。
貧欲に芸術を心の飢えをかくすことなく求め続けた。
ときに想像をこえる行動力を以って。

【まとめ】夢二の描く女性のしぐさには、「美しさ」「強さ」「哀しさ」がある。

彼の写真の姿は人生の憂鬱を想像させますが、作品の女性は明るい色調で描かれるものが多い。
その華やかさが哀しさをかくし、浪漫を感じさせる不思議さ。
大正時代の雰囲気を表現、誰も真似することができない。

だから今でも彼の絵は特別なものでありつづける。

表現したい欲求に対して人生は短く哀しい。だからこそ濃密に素直に。
何か形に残しておかないではいられなかった。
彼は女性のしぐさを完璧に描き、女性を通して自身の思いを投影していた。

その静かな叫びが人々の心をとらえた。そう言えないでしょうか。

*次ページは千葉県銚子で出会った女性「カタ」を取り上げます。