*違う角度からみることが必要だと思った。
この小説を読むにあたり、捉え方として必要なのは「彼女の気持ち=結婚した女性の心理」ではないでしょうか。
彼女が“ねむれなくなった理由”を考えてみました。
【仮説をたててみた】彼女は夫への愛情が薄れている。
彼女は自分で考えているよりも繊細な性格なのだと思います。
彼女が眠れない理由を探した時に、そのきっかけに結婚生活があると思いました。
気になるのは彼女の口から幸せがさほど感じられないことです。
子供への愛情は書かれていますが、夫との関係は変化している。
義務的とはいえ、日々の暮らしを反復とか簡単とかで言い切ってしまいます。それが何か間違えている。
間違えているのは、「現実のとらえ方」?
視点が体から離れてしまう癖がある。
彼女自身が彼女の変化にまわりの人は気づいていないと言っていますが、理解されないというよりも、彼女の生き方が周囲との関係に「壁」をつくっているのではないかという事です。
彼女の頭の中の「箱」「部屋」「檻」「水」。四つの言葉から考えた。
【存在を守っている「箱」:体(存在)】
箱については最終ページに出てきます。
ねむらなくなって思ったのは、「結婚生活において現実は反復であり、たやすいこと」だという。
周りの出来事は自分の存在を揺り動かしはしない。
しかし眠らなくなって彼女の頭の中には濃密な闇がつまってくる。
それは私をどこへも連れていかない。
誰かに車を左右に揺さぶられた時には存在を揺り動かしているという。
「そして箱に閉じ込められたままどこにも行けない」という。(P87)
彼女の体はその箱に守られている。自分の存在を維持するものだ。それは簡単だという。
しかし精神はその箱の外にある。彼女はその二つを一緒にする力がない?。
【自分を閉じ込めるもの「部屋」「檻」:家庭?】
人を狭い部屋に閉じ込めて‥(P58)
つまり人はそのような傾向の檻に閉じ込められて‥(P63)
【地面を覆っている「水」:精神】
水については小説内に2カ所出てきます。
最初に登場したのは彼女が寝ている場面(P26-29)。
彼女の足元に現れた老人。彼は水差しで彼女の足に水をかけ続ける。不思議なことにどれだけかけても水差しの水はなくならなかった。そして彼女の足が腐って溶けてしまうのではないかと思った。
2番目に「水」が登場したのは終盤(P76)。
「子供の寝顔を見てるうちにみちていた水が急速に引いて地面が露になるように明確になった」、そして彼女は悲しくなったという場面です。
ということはそれまでは水が地面を覆っていた、彼女の足元に水が満ちていたという事です。
(P78で彼女が何かを決心したのは間違えなさそうです。)
水が足にそそがれている・地面を覆っていることで動き出すことが出来ない。
しかし水は流れるものなのに、無くなって地面が見えると不安になる。
*次ページが感想になります。