翼を広げ飛ぶカモメ

「夏帆」村上春樹著-感想-2025年「新潮」6月号より【ネタバレあり】

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「夏帆」-村上春樹著を読んだ感想になります。新潮社刊「新潮」6月号に掲載された小説の感想です。2025年に発表された「夏帆」であり(その1)です。【注】ネタバレ含みます。

*最近発売された新潮社の新刊本「夏帆 The Tale of KAHO」は修正・加筆しているとのこと。今回感想を書いている「夏帆」(その1)は新刊に載っているものと同じではありません、その点はご注意ください。

「夏帆」

おもな登場人物

夏帆:26歳女性、絵本作家。
町田:神田にある出版社の女性編集者、夏帆より4歳上。
男性(佐原):40歳前の中年の独身男性、証券会社勤務。

あらすじ(冒頭から中ほどまで)

夏帆は26歳の女性、本職は絵本作家でアルバイトで挿絵も描く。最近2年余りつきあっていた恋人と別れ沈みこんでいた。

夕方レストランで初対面の男性とブラインドデートをする。男性は10歳位は年上で、身なりは清潔でハンサムだった。(微笑みを浮かべる癖あり)
男性はつきあいのある出版者の編集者「町田さん」の紹介だった。

食事をしてデザートを食べコーヒーが運ばれてくるのを待つ間のこと、男性の話は上手だった。夏帆の好みではなかったし内容は思い出せない。

食事をおえて、夏帆はその男性からいきなり侮辱された‥。

夏帆は立ち去ることができなかった。男性は最後まで食事をした理由を語る。
彼は夏帆を不器用な女性といい “その不器用だという事実が君の人生にどんな影響を与えているか”が知りたかったのだという。

彼は軽く会釈をして店を出ていった、振り返ることもせずに。
その後町田さんから聞いたのは彼の名前が「佐原」ということ。

しばらくして、夏帆は町田さんから電話をもらう。佐原は夏帆ともう一度会って話をしたいという……。

*【ブラインドデートとは】見ず知らずの相手とペアになること。メリットは「身元がわかっていること」ですが、デメリットは断りにくい所。

【感想】

夏帆は26歳まで気にしていなかったことと直面し驚いた。

夏帆はその男性との出会いによって、自分が見透かされていることに気づいた?。自分の容姿や自分自身について見つめなおし、認識し直す必要に迫られた。

それは自分が相手の言動に対して出て反応出来ない、自分自身に説明できないことが示していた。(自分固有の中身?を、見ないで生きてきたのではないかという疑問)

彼女は男性の自分に対しての“好奇心”と勝手な意見を聞くことで、今まで自分が自分の人生に対して“してこなかった事”に気づいた。

自分の顔に興味を持てていないのも関係している。それが男性「佐原」を近づけてしまった理由なのかもしれない?

顔や容姿にこだわる年齢だったのに、その葛藤がなかった。女性として大事な部分が。(それは女性にとってどういうことか)

女性にとって顔とは何を意味しているのか?問いかけているようにも思った。

(仮説ですが、とても大事なものではあるが、生活していく点ではあまり意味がないと思っていた。それが正論でも女性として自分から離してしまうのは避けなければいけなかった(種をつないでいく働きの中で)。それを佐原という男性によって知らされた。それは傷というより動物として欠けている事を知るということだった。)

夏帆はこれまで自分が自分の人生にしてきたこととは
またそれについて、どう思っているのでしょうか?その辺が知りたくなりました。(別れた彼との関係もその辺に原因があるのかもしれません。)

なぜアリクイ?

「夏帆」の中で 「アリクイ」が出てくる。それは夏帆が「佐原」と初めてあって食事をした後の会話の中。
「彼は夏帆の心の動きを残らず読みとっている。アリクイが舌の先で蟻の巣を舐め尽くすみたいに。」

アリクイ【食蟻獣】とは?

貧歯目・アリクイ科の獣の総称。 歯はなく強い前肢の爪で蟻の巣を壊し、細長い舌を出して蟻を食う。オオアリクイ・コアリクイ・ヒメアリクイがある。中南米産。
*貧歯目(ひんしもく)とは、歯が全くない、もしくはエナメル質を欠くなど「不完全な歯」しか持たない哺乳類のグループのこと。

*広辞苑第六版、WEB情報より

彼は夏帆との会話の中で、オーストラリアの蜘蛛を見たときの話から、食物連鎖の構造の巧妙さ、華麗さについて驚いたと語る。

(佐原はオーストラリアに行ったことがあるので、アリクイはそこでの話なのだろうか)

調べたらオーストラリアには一般的なアリワイはいないが、 アリやシロアリを生食とする固有の有袋類である『フクロアリクイ』が生息している。体長は20~25cmほどで背中にシマ模様があり、長い尻尾をもっている。
昼間に活動して長い舌でシロアリを舐めとって食べる。

佐原の言葉に出てくるアリクイの真の意味とは?夏帆とアリクイと関係はあるのか?。そもそもなぜアリクイなのか、そこにもテーマが隠れているのか。疑問は深くなりました。

何か違和感がある

この小説はいつの時代が舞台なのだろう?。読み終えてまず頭に浮かんだ疑問はこれでした。

それは主人公の「夏帆」がスマホをもっていないこと。
これは編集者・町田さんとの連絡でわかる。彼女は受話器のある(家の)電話で会話している。

しかし佐原の言葉からは“デートアプリ“が出てくる、昭和にデートアプリは存在しない。なので小説の舞台は最近だとわかった。

男性のファッションも裏付ける。
「佐原」は、BMWの1800CCのバイクに乗っている。しかし調べると昭和にBMWの1800ccバイクは発売されていない。(モデル「R18」は2020年の令和に入って世界初公開し発売された)

・彼「佐原」の私服は渋い。濃い茶色の革ジャンパーに細身のブルージーンズ、サングラスを胸ポケットに入れる。靴はワークブーツ 。(*元は1950年代の反逆的なイメージのスタイル)
これは1990年代から2000年初頭の流行っていたファッション。

・佐原はカモミールのハーブティを注文する。ちなみに1990年代以降に流行った。これは男性のファッション感覚からしておかしくない。

*小説の中で、男性「佐原」のファッションについてはかなり詳しく書かれている。

男性のファッションを知って時代については解決した。夏帆はスマホを使っていないけれど、持っているが使っていないだけなのでしょう。変わっているがスマホ嫌いなのかも。(またはシンプルにキャラクターの設定?)

再度夏帆の様子をチェックしてみる。
夏帆のファッションについては、ほとんど書かれていない。26歳の若い女性なのに‥。(これは気になる点です)

物語の終盤、夏帆は前回嫌な思いをした男性と再度会う。会話の中で“年上の男性に対して”「病んでいる」と言う。続けて自分の意見を言う。(ハッキリしている)

夏帆の性格が少しずつみえてきました。佐原との関係はどうなっていくのでしょうか。これからの展開が楽しみです。

*最後までお読みいただきありがとうございました。推測が混ざった感想でした。次回は「武蔵境のアリクイ、夏帆その2」を読みすすめたいと思います。(その2の前にアリクイの話が入るかもしれません。)

*「夏帆」-村上春樹著を読んだ感想でした。新潮社刊2025年「新潮」6月号に掲載された「夏帆」(その1)です。

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